ゲーム好きだったが人狼ゲームとは馴染みが薄かった

ゲーム好きだったが人狼ゲームとは馴染みが薄かった

「そもそもブログ記事の内容は、自分が発見したものでもなんでもなかった。ゲーム内でたまたま一緒になった、今では名前も思い出せないユーザーが雑談のように教えてくれた方法で、それを載せただけでした。それに、ゲームでの不正な方法は、たいていゲーム会社側が対策して使えなくなるものだから、自分が提供した情報もすぐに役に立たなくなって、たいした問題にならないと思っていたんです」

 ここでX氏の独りよがりを責めるのは簡単だが、彼は特殊な考えを持っているわけではない。「みんながやっている」から大丈夫だろうと考え、結果として軽率なことをする人は、この世にはいくらでもいる。彼もそのうちの一人だっただけだ。

◆何でも無料じゃないと怒る人は変だと思っていたのに

 X氏が次の態度を決めかねたまま季節が夏から冬になった2019年12月、「人狼ジャッジメント」をめぐる不正行為問題は、前出の刑事事件に発展しニュースとして報道される事態となった。さらに、自身のブログが運営会社の権利を侵害しているとの仮処分決定が発令され、サーバ会社を通じて運営会社より連絡を受けるなどした。2020年4月にようやくX氏は決心がつき、ゲームを運営するそらいろ株式会社へ、自分が問題のブログを運営していたと名乗り出た。

 その後の手続きは、新型コロナウイルスの感染拡大もありなかなかすすまなかった。大学の講義などもすべてリモートとなり、外出もままならない一人暮らしで、嫌でもこの問題を考えさせられる時間が増えた。

「これからどうなるか未知の領域に入っていたので、相当な不安はありましたし、それなりのストレスも抱えていました。でも、ネガティブになっても解決しないので、これからどうやっていくか、前に進むように考えました。ゲームではないですが、自分でプログラムを書くようになっていたこともあって、漫画村の事件のように、何でも無料じゃないと怒るような人がいることには違和感があった。それなのに、ゲームについては認識が甘くなって分からずにいたなと思うようになりました。そして、ブログに載せる素材についても権利関係を気にするようになりました」

 ここまですべてのことを、X氏は家族にも、誰にも相談せずに一人で行っている。ネット上で愚痴をこぼすように相談したことも無かった。唯一、調べていくうちにわいた手続き上の疑問を弁護士ドットコムの無料で弁護士に相談できるオンラインQ&Aサービス「みんなの法律相談」へ投稿したが、回答を読んで知識が少し増えただけで、直面する問題解決には結びつかなかった。そして緊急事態宣言があけ、そらいろ株式会社代理人の中島博之弁護士と初めて面談をしたあと、両親に「ブログでトラブルを起こして賠償金を支払うことになったので、お金を貸して下さい」とメッセージを送った。受け取った親からは折り返しの電話がすぐ掛かってきた。

「もちろん、怒られました。まず、ちょっと考えれば、あの記事を載せたら迷惑がかかるということはわかることなので、そこを考えず、軽はずみな気持ちで出したということが大きいミスだと。ただ、やってしまったことは仕方ないので、この件をどう反省して、未来にどう生かしていくかを考えなさいと言われました。賠償金については支援を約束してもらいました。多少、稼いでいるとはいえ、まとまったお金はありませんから」

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