勢いでブログを投稿してしまった(イメージ)
◆世界で唯一だと、勢いで出してしまった
中学生のときに夢中になった『コール・オブ・デューティ』シリーズをはじめ、もともとシューティングゲームが好みだったX氏は、人狼ゲームとは縁が薄かった。だが友人のすすめで「人狼ジャッジメント」を始めると、「そこまでハマってはいなかった」と言いつつ、まとまった時間があるとゲームにログインするくらいには夢中になった。リーダーになるよりも、参謀のような位置で推理をするのが楽しかったという。ところが、楽しかったゲームで事件が起きた。自分のアカウントが停止、いわゆる「垢バン」されてしまったのだ。
「自分のアカウントが止められる心当たりは、実はありました。でもゲームは続けたかったので、以前、人狼ゲーム内で他のプレイヤーが教えてくれた方法を試してみたら復活できた。この情報をネットで調べてみたら、誰もまとめている人がいなかった。自分がまとめてブログに出せば世界で唯一の情報源になると思って、勢いで出してしまった」
ネットのどこにも存在しない情報であることにX氏が高揚してしまったのは、彼がブログというメディアの運営に慣れていたためだったようだ。彼は「人狼ジャッジメント」に関わるブログとは別に、約2年前から商品レビューを中心としたアフィリエイトブログを持ち、「確定申告が必要なくらい」の収入を得ていたのだ。ブログ運営は好調で、競合相手が多い内容でもGoogle検索されやすい、ランキング上位の存在に育っていた。その経験から、類似情報がネットに無かったという検索結果を過大に評価して気分が高揚してしまった可能性は高い。そして2018年夏、休眠させていた別ブログへ、掲出前に慎重に見直すいつもの作業をしないまま問題の記事を投稿した。
とはいえ、商品レビューブログと違って、人狼ジャッジメントについてのブログ記事は「たいしてPVも上がらなかった」し、YouTubeに載せた動画の再生回数も伸びなかった。それでも、ブログに寄せられたコメントにマメに返信したのは少し得意な気持ちもあったのではと聞くと「事務的に、丁寧に返信しただけ」という。
記事の影響力を見直す機会がないまま時間が過ぎた2019年夏、契約しているインターネット事業者から、ブログ記事による権利侵害を理由に「人狼ジャッジメント」運営会社から任意の情報開示請求がされているという連絡が届いた。X氏はこのとき、「これは公共性・公益性があり内容は無論事実である。したがって、表現の自由が満たされる。故に権利侵害には該当しない」など、ネットで調べた知識をもとに情報開示に同意しないという内容の反論を送った。ちなみに、X氏は大学院生だが法学専攻ではない。
「自分の中では正直なところ、謝罪しないといけないという結論が出ていました。言い方は悪いですが、逃げ切れるとか、そういう流れはないなと思っていたんですけど、何か方法がないかと反論してしまった」
X氏は「個人情報が特定されたら、運営会社に謝りに行こうと思っていた」というが、相反する行動をしていた。その態度は、問題とされたブログに対する思い入れがなかったがゆえに、責任を感じづらいことも起因してのではないか。