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無線が趣味の寡黙な60男が特殊詐欺の「受け子」に堕ちるまで

新型コロナウイルスでますます活発になる特殊詐欺。便乗した不審メールの画像[KDDI提供](時事通信フォト)

新型コロナウイルスでますます活発になる特殊詐欺。便乗した不審メールの画像[KDDI提供](時事通信フォト)

 新型コロナウイルスによって、社会の様々な活動が停滞していた間も、詐欺グループだけは活発に活動を続けていた。若者にくらべて中高年はコロナに感染すると劇症化しやすいと言われているが、それでなくとも中高年は、己の体力の衰えや財力、死ぬまでの時間を考えると冷静で居られなくなる。真面目な中高年が、どうやって特殊詐欺に加担するに至ったのかについてライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 東京・神楽坂の喧騒から10分ほど歩いたところに、その家はあった。建てられてから50年近く経っているように思われる古い外観ではあるが、大都会に佇む一軒家には変わりなく、土地の価値だけでも数千万円はくだらない。近隣住人が言う。

「普段は会っても会釈程度、寡黙な印象です。少なくともお父さんの代からお住まいで、昔は何か商売をやられていたようです。ご本人は無線かなんかが趣味らしいと噂で聞いたことがある。先日、警察が捜査にやってきたと妻が言っていましたが、私はよくわかりません。ただ、まさか詐欺をする人だとは思わなかった」(近隣住人)

 この家の住人・持田正男(仮名・60代)は今年5月、埼玉県内の女性から現金700万円以上を詐取したとして逮捕され、6月にも富山県内在住の女性から現金200万円を詐取した「別件」で再逮捕されている。いずれも、架空請求メールなどを送りつける「特殊詐欺事件」であり、持田は現金の受け取り役などを担う「受け子」だったという。無線が趣味という寡黙な60男と特殊詐欺が結びついたのには理由があった。

「実は、持田自身が特殊詐欺の被害者なんです。自宅に届いた架空請求はがきに書かれた電話番号に連絡し、約110万円を騙し取られたのです。昨年、持田自身が最寄りの警察署に相談していた記録も残っている」(大手紙警視庁担当記者)

 持田が騙されたのは、テレビや新聞報道でも盛んに注意喚起が行われていた、古典的すぎるハガキを使った架空請求詐欺だ。ハガキの裏面には「未納料金」とか「最終通告」などというキーワードと共に、東京の裁判所名が記されていた。筆者はこのハガキ詐欺についても取材をしたことがあるが、関与している人間側が「下手な鉄砲も撃てば当たる」と言うほど、雑な手法であった。前述の通り、マスコミにも散々取り上げられていたはずで、よほどのお人好しか、世間に疎いか、思考が足りないのか…。さすがに「これには騙されない」と、詐欺ハガキが届いたという人々が、SNSに続々とアップするほどのシロモノだったのである。

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