◆3密回避するには輸送人員を32%に減らすことが必要

 通勤、通学者がひしめきあう通勤電車はまさに3密の現場だ。マスクをしていても感染を完全に防ぐことはできない。ニューヨーク・タイムズが7月4日、科学者数百人が空気感染の可能性を示す科学的根拠があると指摘。WHO(世界保健機関)に対し、推奨する対策を見直すよう求めていると報じた。

 これを受けWHOは7月9日、屋内で空気感染する可能性があるという新たなガイドラインを発表した。満員電車内のリスクは一層高まったと言えそうだ。

 緊急事態宣言が出ていたころは、主要駅の利用率は2月に比べ3割台まで低下していた。その頃は電車内も閑散としていて一つの車両に数人しか乗っていないことも珍しくなかった。ところが、最近は隣の人と肩がぶつかるのは当たり前。さすがに180%といった混雑状況にはないが、100%を大きく超えている。サラリーマンの不安、感染恐怖は募る一方だ。

 そんな通勤電車と感染症について、実に興味深い調査結果がある。

 国交省国土交通政策研究所が2011年9月にまとめた「通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」だ。2009年の新型インフル流行を受けて、強毒性の新型インフルエンザの感染を念頭に、「都市鉄道の混雑度の抑制により新型インフルエンザの感染を相当程度抑える対策の実現可能性と効果を検証することを目的とした」ものである。

 コロナ対策にも通じるところがあるので、興味深いところを紹介しよう。

(1)パンデミック時の都心への通勤者は通勤者の意識調査から通常時の66%に減少する。その前提で乗客相互の間隔を1m空けた場合、山手線内に流入する通勤者300万人が96万人になる。

 縮減率(通常時に比べた水準)は32%。2m空けた場合、300万人が53万人に(同)18%に減る。満員電車から解放されるわけだ。逆に言うと、現行の輸送人員を7割、8割減らす抑制策が必要ということだ。

(2)輸送人員抑制による感染拡大抑制効果評価(外国で感染して帰国後に発症したケースをモデルに、乗車率の条件を5つに分けて検証)。

●輸送対策なし/発病率(他者への感染率)=約20%
●乗車率20%(対策7日目から)/発病率=0.81%
●乗車率20%(対策14日目から)/発病率=5.47%
●乗車率10%(対策7日目から)/発病率=0.34%
●乗車率30%(対策7日目から)/発病率=1.68%

 乗車率を低くして、早めに対策を打てばより効果があるということだ。

 もっとも、これはあくまで実験と机上のシミュレーションである。報告の考察では「鉄道事業者を含む公共交通機関の側が乗車制限を行うことは困難」として、「事業者による事業規模の縮小、在宅勤務、時間帯を大幅に広げた時差出勤、一時的なシフト勤務の実施等を含む、いわゆる強毒性新型インフルエンザを想定したBCP(新型インフル対応の事業継続計画)の策定を社会全体で進めるべきである」という現実的な提言を行っている。

 この調査結果について同研究所に問い合わせてみたが、当時の担当者がすでにいないため公表資料以外のことは分からないとのこと。さらに、同様の研究は現在は行っていないとのことだった。実現可能性は別にして、この数値モデルは今回のコロナ禍への通勤リスク防止対策として大いに参考となるはずだが……。

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