感触、肌触りも癒し? 母のクッション愛深まる
ホールドクッションは生地もフワフワして心地いい感触だった。茶色の無地で丸っこいのでひざの上に寝そべった犬の背中のようでもある。
ふと見ると母は雑誌も見ないでクッションをなでていた。母が要介護になったとき泣く泣く里子に出したマルチーズのモモちゃんを思い出しているように、時々、モモちゃんにしたようにトントン叩いたりもしていた。
丸くてフワフワと肌触りのよいぬいぐるみを抱きしめると癒されるという話が、そんな母を見ていてしみじみとわかった。「なでなでトントン」は、されている方よりも、してあげる方が癒されていることが多いのかもしれない。
「シャンプー台へどうぞ!」
母のカラーの待ち時間が終わって、若い美容師さんが呼びに来た。母は立ち上がり、両手で抱えたクッションをイスに置くのかと思いきや、そのままシャンプー台へ先導する美容師さんの後を追った。
まるで浮き輪をまとった小学生のような格好に、またまた笑いを巻き起こした。
「クッションはお預かりしておきますね(笑い)」と、追いかけて来た別の美容師さん。
母も照れ笑いを浮かべてクッションを返しながら、愛おしそうにまた“なでなで”。美容院に来る楽しみがもう1つ増えた。
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号