長谷川氏(右)は記者と検察との関係を指摘

郷原:私は特捜部の検事だった頃、そういう記者たちの姿を見て、もの凄い違和感を覚えました。特捜部の検事になった途端に、記者の夜回り(取材)が来る。夜も来るし、朝も駅までついてくる記者がいる。帰ってきたら、雨がひどく降っているのに、物陰から出てくる。なぜここまでやるのかと。

長谷川:むしろ、雨が降る日や雪が降る日は狙い目なんです。俺はここまでやっている、という相手に対する演出になるから。

郷原:それで、私もたまに何を聞きたいかと話すんだけど、彼らは自分の考えが全然ない。「捜査でいつ何があるんですか」それだけ。彼らの生態というのはそうなんだと強く感じてきた中で、私が付き合ってきた中にも、ごく僅かですが、問題意識を持つセンスのある記者もいました。特捜部は事実関係よりも特定のストーリーに合う調書を取るかどうかの問題で、事実の解明なんて何にも考えていないのではないか、と疑問を抱く記者ですね。しかしそういう記者は司法記者クラブからは外れていき、検察と同じ価値観に浸っちゃう記者だけが残る。

 私はそうした司法とメディアの癒着があることが、特捜部が暴走する原因だと思っていました。どこかで正していかねばならないと思っていた。日産のカルロス・ゴーン元会長については、新聞が特捜部の描く「強欲な独裁者」像に沿った報道をしていたことを『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館刊)で指摘しました。

長谷川:そういう問題意識を持っているのは、検察の世界では、郷原さんぐらいしかいないんじゃないですか。

郷原:私はもともと検察官になりたいと思っていたのではなく、たまたま入り込んでしまったから。

長谷川:大方の検察官はそんなことを思っていないでしょう。さらにすごいのが財務省ですね。財務省は新聞記者が財政について意見するなんてとんでもないし、できるわけがないと思っている。それをするのは俺たちの仕事だと。省議や局内で決めたことがすべてで、そこで決めたことを通知する相手が記者です。財務省には、幹部が記者や評論家など部外者に説明するための「標準的な説明の流れ」という30枚から40枚くらいの文書があって、どの記者がどんな議論を吹っかけても、相手はそこに書いてあることしか答えない。財務省はそこまで意思が統一されています。

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