ところが、ある時、後に財務次官になる幹部と議論したんです。そこで「財政再建のためにも、政府のサイズをもっと小さくしたらいいんじゃないか」と言ったら、彼はその「対外的説明の流れ」に沿ってお話しをされた。それを聞いて「ああ、この人は私と全く議論する気がないんだな」と分かりました。私はまがりなりにも論説委員だし、財政制度等審議会の委員だったんですけど、そんなのはまったく関係ない、というか、ポチにすぎない。その経験があって、これが私の永遠のテーマになるんですけど「メディアの自立」ということに考えが至ったんです。
メディアは、いかにして霞が関など権力や政治から独立してモノを考えられるか、こうすべきじゃないかという議論ができるようになるか。でも、そういうふうに自分を位置付けて、政府や検察にモノを言ってくのは、大変なリスクがある。間違えるリスクがあるし、サラリーマンで論説委員やっていれば、給料もらえますし、周りからちやほやされます。でも、いずれ組織から離れたときに食っていけるか、という別の問題もある。たまたま私は、それなりにやってきましたが、私から見て、自分でモノを考えて、ポチにならずに議論している記者って何人いるか。ほとんど、見当たりませんね。
◆対談は2020年6月24日に行われた