ライフ

「感染は自業自得」と言いたがる闇勢力にひるんではいけない

(AFP=時事)

 難しい状況でこそ人間性が出るものだ。コロナ禍は人間の醜さをもあぶり出している。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
「感染者の“落ち度”を探して『自業自得だ』と言いたがる人」と「性犯罪が起きると被害者の“落ち度”を探して『自業自得だ』と言いたがる人」は、もしかしたら同じ人たちでしょうか。もちろん、どちらの場合も非難したい人が強引にこじつけた“落ち度”であり、感染者や被害者が責められるいわれはカケラもありません。

 同じ人たちかどうかはさておき、新型コロナウイルスは人間の弱さや醜さや情けなさをあらためて浮き彫りにしています。今日も全国各地で、感染者やその家族に対する差別や暴言が後を絶ちません。医療従事者の家族や子どもが、職場や学校でバイキン扱いされるという事態も報じられています。

 7月29日には全国で1289人の感染が確認され、ついに1日1000人を突破しました。今まで「感染者ゼロ」が続いていた岩手県でも、初めて2人の感染が確認されています。翌30日には全国で1308人と最多を更新。31日には東京都の感染者が、最多だった前日を一気に100人近く上回って463人となりました。22日から「Go To トラベル」キャンペーンが始まって人の移動が増えている中、最多記録はさらに更新されていくでしょう。

「ゼロ」が続いていた岩手県では、県民のあいだで「第1号になることの恐怖」が高まっていました。その恐怖心の大半は、ウイルスに対してではなく、周囲の人々や世間に対するものです。6月下旬には、東京在住の会社員が、岩手に住む父親に「そろそろ帰っていいかな」とLINEで送ったら、父親から「絶対に帰るな。」「岩手1号はニュースだけではすまない。」と返ってきた──。そんなTwitterの投稿が大きな話題になりました。

 もちろん、「世間」を恐れるのはこの父親だけじゃないし、岩手県だけではありません。日本に住む多くの人は、ウイルスも怖いけど人間はもっと怖いと感じていることでしょう。感染者が住む家や感染者が働く会社に石が投げられたという事件は、あちこちで起きています。感染者が引っ越しや退職に追い込まれたケースも珍しくありません。

 岩手県の達増拓也知事は、以前から「第1号になっても県はその人を責めません」と言ってきました。2人の感染が確認されたときも「県民は自分もコロナに感染する可能性があると共感をもっていただきたい」と、冷静に対応することを求めています。

 しかし、感染した男性が、関東地方に泊りがけでキャンプに行っていたことが報じられると、ネット上では(たぶんネット以外でも)「この時期にそんなことするからだ!」という非難が巻き起こりました。名前や勤務先を特定しようとする動きも起きています。「バッシングはやめよう」という声も多くあるのが救いですが、勇気を出して検査を受けた男性が、今後周囲のあたたかさに包まれることを願ってやみません。

 当たり前すぎるぐらい当たり前の話ですが、どんなに気を付けていても、感染するときはします。仕事も行かなければいけないし、遠くに移動したり人と会ったりするのも、人それぞれの必然性があります。リスクの高い行動をしたからといって、「そうか自分は気を付けよう」と参考にするのはいいとして、赤の他人が非難する筋合いはありません。感染者は、あくまで「労わられるべき気の毒な被害者」です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(右・時事通信フォト)
「言いふらしている方は1人、見当がついています」田久保真紀氏が語った証書問題「チラ見せとは思わない」 再選挙にも意欲《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
13日目に会場を訪れた大村さん
名古屋場所の溜席に93歳、大村崑さんが再び 大の里の苦戦に「気の毒なのは懸賞金の数」と目の前の光景を語る 土俵下まで突き飛ばされた新横綱がすぐ側に迫る一幕も
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
「結婚前から領収書に同じマンション名が…」「今でいう匂わせ」参政党・さや氏と年上音楽家夫の“蜜月”と “熱烈プロデュース”《地元ライブハウス関係者が証言》
NEWSポストセブン
学歴を偽った疑いがあると指摘されていた静岡県伊東市の田久保真紀市長(共同通信/HPより)
《伊東市・田久保市長が独占告白1時間》「金庫で厳重保管。記録も写メもない」「ただのゴシップネタ」本人が語る“卒業証書”提出拒否の理由
NEWSポストセブン
7月6~13日にモンゴルを訪問された天皇皇后両陛下(時事通信フォト)
《国会議員がそこに立っちゃダメだろ》天皇皇后両陛下「モンゴルご訪問」渦中に河野太郎氏があり得ない行動を連発 雅子さまに向けてフラッシュライトも
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、経世論研究所の三橋貴明所長(時事通信フォト)
参政党・さや氏が“メガネ”でアピールする経済評論家への“信頼”「さやさんは見目麗しいけど、頭の中が『三橋貴明』だからね!」《三橋氏は抗議デモ女性に体当たりも》
NEWSポストセブン
かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏(共同通信)
《“保守サーの姫”は既婚者だった》参政党・さや氏、好きな男性のタイプは「便利な人」…結婚相手は自身をプロデュースした大物音楽家
NEWSポストセブン
松嶋菜々子と反町隆史
《“夫婦仲がいい”と周囲にのろける》松嶋菜々子と反町隆史、化粧品が売れに売れてCM再共演「円満の秘訣は距離感」 結婚24年で起きた変化
NEWSポストセブン
注目度が上昇中のTBS・山形純菜アナ(インスタグラムより)
《注目度急上昇中》“ミス実践グランプリ”TBS山形純菜アナ、過度なリアクションや“顔芸”はなし、それでも局内外で抜群の評価受ける理由 和田アキ子も“やまがっちゃん”と信頼
NEWSポストセブン
中居、国分の騒動によりテレビ業界も変わりつつある
《独自》「ハラスメント行為を見たことがありますか」大物タレントAの行為をキー局が水面下でアンケート調査…収録現場で「それは違うだろ」と怒声 若手スタッフは「行きたくない」【国分太一騒動の余波】
NEWSポストセブン
かりゆしウェアのリンクコーデをされる天皇ご一家(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《売れ筋ランキングで1位&2位に》天皇ご一家、那須ご静養でかりゆしウェアのリンクコーデ 雅子さまはテッポウユリ柄の9900円シャツで上品な装いに 
NEWSポストセブン