130の国・地域の人々が暮らす「人種のるつぼ」に異変
都内でもっとも人口減が激しい新宿区の実態を探ると、その傾向が顕著だ。
新宿区の1月1日現在の総人口は34万8452人。日本人30万5854人に対し、外国人は4万2598人。外国人比率は12.2%という全国有数の高さを誇っている。しかも、約18平方キロメートルという狭い面積(23区中13番目)に約130の国・地域の人々が暮らしている。まさに“人種のるつぼ”である。そして外国人人口の半数近く、約2万人が19歳から29歳の若い世代で占められている。
コロナ禍が拡大したこの半年間で、この国際タウンの様相が一変しつつある。6月1日時点の総人口をみると、前月と比べ日本人は160人減、外国人は368人減。日本人住民の2倍以上の外国人住民がいなくなった。
7月1日現在でみると、総人口は34万6643人で、6月よりもさらに減った。日本人は125人の増加に転じ、5月1日の水準に近づいた。その一方で、外国人は6月に比べ496人も減っている。わずか2か月間で864人もの外国人が減ったことになる。1月からの半年間でみると、日本人は2437人増加したのに、外国人は4246人も減少した。約1割の大幅減である。新宿の人口減は外国人減が原因だった。
新宿から次々と姿を消す中国人、ベトナム人、ネパール人
では、新宿区から姿を消しているのは、どの国の住民が多いのだろうか。新宿区に住む外国人の順位は次の通り。
(1)中国1万5120人(2)韓国1万150人(3)ベトナム3042人(4)ネパール2909人 (5)台湾1951人(6)ミャンマー1865人(7)米国980人(8)フランス787人(9)フィリピン748人(10)タイ678人(2020年1月1日現在)
最新の7月1日時点で見ると、3位のベトナムと4位のネパールが入れ替わっているが、この半年間の人口変動で目立つのは、中国人の大幅減少だ。7月は1万3007人で、1月に比べ2113人減、半年で実に14%の人がいなくなってしまったのである。ちなみに、その他の国でも韓国5%減、ベトナム17%減、ネパール11%減、台湾9%減。ロシア(7月/148人)も18%の大幅減だ。
区の人口問題を研究・分析している新宿自治創造研究所の担当者に減少理由を尋ねてみた。すると、意外な答えが返ってきた。
「新宿区の場合、住民登録している外国人に留学生が多いのが特徴です。(卒業シーズンの)3月から4月にかけて例年、外国人の方は400~500人減るのですが、今年は1685人も減っています。
(入学シーズンの)4月から5月にかけては、例年は1000人から1500人増えるのですが、今年は逆に約1000人減っています。(外国人減少の)背景のひとつに留学生の動向があるとみています」
なるほど。新宿区の外国人大幅減のキーワードは留学生だった。たしかに新宿区内には早稲田大、東京理科大、法政大、中央大など有名大学から各種専門学校、日本語学校まで各国からの留学生が集う教育機関が多い。
例年は、卒業とともに国内に就職したり帰国することで新宿を離れる人々がいる一方で、新学期を迎えて新たにやってくる留学生がいた。ところが、今年は入国制限で新規の留学生が入ってきていないことが大きな要因なのかもしれない。