難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者(51)から依頼を受け、薬物を投与した嘱託殺人の疑いで医師2人が逮捕された事件。当初、「安楽死」の是非を問う事件とみられていたのが、ここにきて「医師免許制度」への疑念にも波及してきた。逮捕された山本直樹容疑者(43)に、医師免許を不正取得していた疑いが浮上しているのだ。
「山本容疑者は、海外の大学の医学部を卒業したとして、2010年に医師国家試験を受験、合格している。しかし、今回の事件の捜査の中で、警察が卒業したとされる海外の大学に照会したところ、卒業の事実が確認できなかった。厚労省も調査に乗り出しているという。
一緒に逮捕された大久保愉一容疑者(42)は厚労省で医系技官として働いた経歴があり、山本容疑者が受験する直前の2008~2009年には、医師国家試験に関わる部署で試験専門家を務めていた。不正取得と何らかの関与があったのかが注目されている」(捜査関係者)
過去に医学部への“裏口入学”が取り沙汰されたことはあっても、「医師免許の不正取得」となれば前代未聞である。
日本で医師の資格を得るには、国内の医学部で6年間学んで卒業し、国家試験を受けるのが“王道”である。厚労省によれば毎年1万人が受験し、合格率は約90%だ。
一方、海外の医学部を卒業した場合、厚生労働大臣の受験資格認定が必要となる。
「受験者のうち、海外の医学部を卒業したり、外国で医師免許を得ている人は200人ほどで、合格者は100人程度」(厚労省医政局医事課)だという。近年は、「ハンガリーなどの医大に進んでから日本の国家試験を受けるケースが増えている」(医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏)といい、徐々に広がっている“別ルート”である。