コロナ禍でのレジ袋有料化は正しかったのか
「マイバッグから感染するというエビデンスはない」と語る小泉環境大臣
杉村:新型コロナウイルスの収束がまだ見えない中、欧米ではレジ袋の有料をやめて無料化するところが出てきました。フェイスシールドなどプラスチックでできているものは数多くあり、コロナ禍でプラスチックの需要が高まっているのも事実です。それについて小泉大臣はどうお考えですか?
小泉:おっしゃる通り一部の国でマイバッグ禁止など実施されていますが、マイバッグから感染するというエビデンスはないんです。大事なのは、きちんと感染対策を行い、外から帰ってきたときは手洗いとうがいをしっかり行う。マイバッグも汚れているなら洗っていただく。求められていることが「0リスク」だとしたら、それは議論できません。「0リスク」というのはないですから。その中でどうやって経済活動、社会活動を考えていくのか。そこは丁寧なコミュニケーション、まさにリスクコミュニケーションが大事です。丁寧に説明していきたいと思います。
杉村:それにしても、なぜ環境問題に取り組むと批判する人が出てくるのでしょうか。
小泉:結局、杉村さんが最初におっしゃった「これをやって意味があるんですか」ということだと思います。地球規模で解決しないといけない課題にもかかわらず、アクションが圧倒的に小粒に見える。だから、「それって自己満足なの?」と思われるし、「やっている感」のツッコミが入りやすい。そんな感じがしますでしょ?
杉村:ものすごくそう感じます。
「シリコン袋にフルーツを入れて持ち歩いている」
「レジ袋の削減、そのゴールは?」と聞く杉村氏
小泉:ぼくも環境大臣になり家庭を持って色々変わりました。エコバッグ、マイバッグはもちろん、できる限りペットボトルを使わないようにマイボトルを持ち歩いています。最近では食品用のラップや袋の代わりに、シリコン製の袋を使うようになりました。何回でも使えてデザインもいいですね。その容器にフルーツなどを入れ鞄の中に入れて持ち歩いて食べたりしています。
電子レンジで食品を温めるときも、知り合いからお皿をフタとして使ってラップ代わりにすればラップを使わなくて済むと聞いて、そうしています。こうしたことは、何も行動を取らない人たちからすれば修行僧のように我慢する、ストイックなことをしている、サスティナブルかぶれのように映る側面もあるかもしれません。ですが、ぼくからするとゲーム感覚なんです。1つひとつ自分が変わっていくことが楽しいんですよ。
杉村:楽しいですか?
小泉:楽しいですよ。“これもこうやって切り替えられた”という喜びがあります。自分が変化しているから環境大臣としての発言やアクションも、自分の中で力がこもるんですよ。「私、これやってますよ」と。
杉村:節約感覚と同じようなものでしょうか?
小泉:節約とは違いますね。単純に、できる限り環境に負荷をかけない生き方を選択するかどうか。確かに自分一人の行動が変わっただけで環境は変わらないと思います。だけど、自分だけでもそういったことを考えて行動しようと思えるかどうかは、最後は人生観だったり人生哲学だったりするのでは? そこをできる限り多くの人たちが取り組みやすいように、仕組みとしてやれるかどうかだと思っているんです。
杉村:でも、レジ袋が削減されました、プラスチックゴミが削減されたとしても、その先には一体どんなゴールがあるのですか?
小泉:わかりやすい例で言うと、ペットボトルです。ペットボトルはどんどん技術開発が進んで、1本で使うプラスチックの量もどんどん軽量化されています。杉村さんがテニス、ぼくが野球をしていた時代は、ペットボトルの底は樹脂でした。フタだけアルミというペットボトルもありました。でも今はないんですよ。日本ではペットボトルは透明色ですが、それはなぜかと言うと、透明色の方がリサイクルしやすい材料になるからです。
ペットボトルのリサイクル率はアメリカが20%、欧州が40%、日本は85%。つまり、ペットボトルは生産される前からすでにリサイクルのことまで考えられた設計になっています。こういった設計が当たり前になる、循環型の社会を目指したい。そうすれば地下資源を浪費せずに、より地球環境に負荷をかけることのない経済社会になっていくはずです。