安倍首相も東京五輪を誘致し、新国立競技場を建設し、リニア新幹線を着工させた。だが、池田と違って日本をどこに向かわせるかのビジョンは国民に伝わってこない。

 池田が遺したものはハードだけではない。もう一つの柱が貿易自由化である。津島雄二・元厚生大臣は、「池田内閣の政策で日本経済の発展に最も寄与したのが開放政策でした」と語る。

「海外との人とモノの往来を自由化し、国際的な開放経済体制に移行させた。その一環で、池田さんは各省庁から国際的な仕事が得意そうな官僚を大使館の書記官として派遣し、海外事情を学ばせ、人脈づくりをさせた。私はパリの在フランス大使館の書記官となり、OECD(経済協力開発機構)の日本代表部職員を兼務した。当時は日本企業もまだ体力がなく、海外には出られなかった。そのため我々が日本企業の相談役も果たしました。現在、多くの日本企業が海外市場で稼いでいるが、池田さんの開放政策と制度づくりがあったから、日本は貿易大国になれた」

 池田は東京五輪(1964年)を花道に病(喉頭がん)で退陣したが、池田の成長路線に乗って日本の国民総所得は実質ベースで倍増の目標を達成し、1968年には日本のGDPは米国に次ぐ世界2位となり、「東洋の奇跡」と呼ばれた。

 特筆すべきは、その間、賃金が物価以上に上昇を続けたことだ。高卒初任給(月給)は1960年の8200円から1965年に2倍の1万6000円、1970年には額面で3倍の2万8000円へと増えている。池田が公約した「月給2倍」はそれ以上の効果を上げ、国民の生活は豊かになり、カラーテレビ、クーラー、マイカーの“新・三種の神器”が手に届くようになった。

※週刊ポスト2020年8月14・21日号

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