芸能

玉木宏&高橋一生『竜の道』は松本清張ドラマに通じる質感

番組公式サイトより

 回数を重ねていくごとに評価が高まるタイプの作品、なのかもしれない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(フジテレビ系火曜午後9時)に漂う独特の空気感に心を掴まれている視聴者も多いのではないでしょうか? 玉木宏と高橋一生が「奇妙な双子」として登場するこの作品。ミステリーというよりも人間ドラマとして画面に静かなる狂気が充満しています。人間の中に鬼がいて鬼の中に人間がいることを描き出したドラマ、とも言えるでしょう。

 原作は白川道の未完の同名小説。双子の兄・竜一(玉木宏)は、異なる顔を手術で手に入れ名前も変えて別人になりかわり裏社会で生きてきた。一方、弟の竜二(高橋一生)は国土交通省のエリート官僚になった。すべては、親代わりの人を死に至らしめたキリシマ急便社長・霧島源平(遠藤憲一)に復讐するために。

 ……という筋立てですが、いくら徹底的に美容整形をして顔を変えたのだと説明されても、玉木宏と高橋一生が双子とは。全身の骨格や背格好など雰囲気が違いすぎ……と冷静に見比べる暇も必要もない。視聴者をぐいっと物語世界へ引き込み連れ去っていってしまう力技。視聴者は一気に物語の船に乗せられて沖へと漕ぎ出していく。むしろ、架空の世界に身を委ねる心地よさに包まれるドラマ、と言ったらよいでしょうか。

 一般的に言えば、事件を描くドラマといえば謎解きがポイント。「犯人が誰か」が山場になります。しかし、このドラマは冒頭から復讐犯を知らしめる形でスタートしている。だから、犯人捜しについて時間をかける必要はない。その分、人間をじっくりと掘り下げる。生育歴、社会環境、影響を受けた出来事、葛藤といったプロセスを丁寧に浮き彫りにする。

 素朴な少年だった二人が、人を殺める「鬼」にならざるをえなかったのはなぜか。純粋な真面目さゆえか。人間の哀しさと復讐にとりつかれた凄みとを、竜一役の玉木さんが体現しています。

 「あまり固定概念にとらわれたくないという思いがあります。だから、『こういう役をやったから、ああいう役はやらないんだろうな』と思って見ている人を見返して、常にチャレンジしていると思ってもらえるように、仕事に臨んでいきたいと思います」(2020年8月11日「マイナビニュース」)と語っていた玉木さん。一期一会で竜一に全力投球しています。

 一方、双子の兄と弟との対比もドラマの見所でしょう。

 兄に比べてどこか常識人の色を残した弟を演じる高橋さんは、実にスーツが似合っています。官僚組織の中の一コマになりきるしぐさ、挨拶の腰の角度、他の官僚と一糸乱れぬ群れとなって移動する様子、特に大臣を前にしたプレゼンテーションのシーンは圧巻でした。

 最新の自動運転技術についてパワーポイントを映して専門用語を並べてとうとうと語る、立て板に水のセリフ回し。まるで「役者」というやくざな稼業ではなく、本当にビジネスの現場にいる人みたいにリアル。その抜け目のない演技術に拍手を送りたい。

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン