ビジネス

コロナ禍の飲食店 繁盛していても「閉店」を考える理由

客どうしの距離を置くためマネキン配置。満席になっても以前と同じような売上にはならない(時事通信フォト)

客同士の距離を置くためマネキン配置。満席になっても以前と同じような売上にはならない(時事通信フォト)

 資金を貯めたら自分好みの飲食店を始めるんだ、と夢を語る会社員は珍しくなかったが、今では外食産業に加わろうという人は減っているかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大により3密対策が必須となったいま、どれだけ客が詰めかけて繁盛しているように見えても、内実は火の車で仕事を続けられないと働く人たちは嘆いている。ライターの森鷹久氏が、緊急事態宣言を乗り越えはしたが、この先も飲食店の仕事を続けられない状態に追い込まれている人たちの声をレポートする。

 * * *
 せっかくの夏休み・盆休みも、今年ばかりは満喫できなかったという人が大半だろう。毎年海外旅行に行っていたが国内旅行にシフトした、沖縄に行く予定だったが近場にした、とは筆者の周囲からも聞こえてくるほどである。かくいう筆者は、例年カネもヒマもなかったが、今年はヒマだけはある、ということで、出来るだけ経済を回すべく、感染対策に真面目に取り組む店を見つけては、努めて外食するよう心がけた。そこで目にしたのは、まさに「泣きっ面に蜂」としか言いようがない、外食産業のおかれた状況であった。

「連日、昼から夜までとにかく大盛況。これが、正常な時期でのことなら大歓迎なんですが、コロナ禍で全く対応できない。混雑で接客が回らず、毎日クレームの雨嵐」

 中村まり子さん(40代・仮名)は千葉県内のうどん店従業員。夏休みにどこにも行けないからせめて近場で外食でも、という家族連れなどの客が連日押し寄せ、店はパニック状態に陥っているという。コロナ禍の影響で客足が落ちていたことから、本来6人勤務だったところを4人まで減らしていたが、夏休みの繁盛に合わせて急遽辞めたパート従業員に戻ってきてもらった。だが、コロナ以前より商品提供には時間がかかり、接客も全く追いついていないと嘆く。

「狭い駐車場には車が溢れ、交通整理までしなきゃなりませんし、店の外には今まで見たこともない行列ができる始末。消毒作業もどうしてもおざなりになってしまい、密の状態がができることも…。オーダーのミスも頻発して、客から怒鳴られることも増えました。にも関わらず、本社からは従業員数を減らせ、時給を減らすことも検討している、なんて言われるんだから、一斉に辞めてやろうかとみんなで話しているんです」(中村さん)

 埼玉県内のショッピングモール内にあるとんかつ店店長・堀田詩織さん(仮名・30代)も、同様の「パニック」に陥っていると話す。

「夏休みに入り、ショッピングモールには例年の夏休みと変わらないかそれ以上のお客さんが来られています。モール内で感染者が出たら面倒なことになる、と本社の責任者もピリピリしていて、とにかく消毒作業には気を使っています」(堀田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン