新型コロナウイルス感染予防のため、客が帰った後の机を消毒する(時事通信フォト)
こうした複合施設内で新型コロナウイルス感染者が出て、近隣店舗も含めていったん休業、というケースは減ってきている。しかし「風評被害」は確実にある。コロナが出た、となれば、該当店舗だけでなく一帯の客足がパタリと止んでしまうのだ。こうして、普段の数倍以上の気を使いつつも、売り上げは上がらない。
「密を防ぐため、一席もしくは一テーブルごと間を開けてお客様を案内しています。ですので、単純に売り上げは半分に。さらに、お客様毎に椅子やテーブルをかなり念入りに消毒しているため、かなりの時間がかかってしまう。厨房担当の他にホール係と消毒係、マスクにフェイスシールド、手袋着用というフル装備のレジ係と、それぞれ人が必要になって、人件費も以前より発生しているんです」(堀田さん)
東京都西部でハンバーグ店を経営する村田良彦さん(仮名・50代)は、コロナ禍のダメージはなんとか乗り越えたものの、こうした連日の「騒動」に気を病み、閉店を決めた。
「持続化給付金や休業補償金などで、店はなんとか持ちこたえていました。夏休みも、それなりにお客さんが来てくれましたが、やはりお客さんもピリピリしているのか、些細なことで従業員に食ってかかってきたり、この間は、混雑しているのにつけ込まれて食い逃げされました。仕入先が倒産して預け金が戻ってこないなど、他にもトラブルが山ほどある。私たちには、料理を作って出すことしかできません、他のことにはもう気が回りません」(村田さん)
客が来なくても地獄、客が来ても地獄という現実。こうした現状を打破するには、かつての日常にあった穏やかな空気、ある一定水準の節度をもった行動様式を共有してくれるお客さんたち、いわゆる民度のレベルなどが取り戻されるしかないわけで、いくばくかの金などでは決して解決されない。そんな日常が戻るまでに、ほとんどの飲食店、サービス業従事者が倒れてしまわないか、そんな懸念ばかりが残る。