コロナ禍が続けば明暗分かれる
しかし、折からのコロナ禍によって、他のアパレル企業同様、この2社も苦しい経営を強いられています。ユナイテッドアローズは2021年3月期第1四半期決算で35億8200万円の赤字、アダストリアも2021年2月期第1四半期の連結業績で36億8100万円の赤字になっています。
コロナの収束が見えない中、今後の展開も予断を許さない状況といえますが、目先の展開を考えると、ユナイテッドアローズよりアダストリアのほうが有利ではないかと思われます。
なぜなら、ユナイテッドアローズは都心に店舗が集中しており郊外店がほとんどない一方、アダストリアは都心店もありますが、郊外型ショッピングセンターへの出店が多いためです。非常事態宣言解除後の売れ行きの回復は都心店が鈍く、郊外店は比較的堅調です。
その理由としては、都心店は地価が高いから面積が狭くて「密」になりやすいこと、さらに都心店には駐車場がない、また小さいため、来店するためには電車やバスなどの公共交通機関を使う必要があり、都心の公共交通機関は「密」になりやすい──という2つの理由があると考えられます。郊外店や地方店が比較的堅調な理由はこの逆です。コロナ禍では、消費者は都心店より郊外店に安心感を抱いているのです。
ネット通販が大きく伸びたと言っても、まだまだ実店舗売上高の方が大きく、「洋服は店で実物を見てから買いたい」と考える人が7割ほど存在します。このため、都心店の比率が高いユナイテッドアローズのほうが当面厳しい状況が続くのではないかと思われます。コロナの感染拡大が収まり、過度な恐れが払拭されればその限りではありませんが。
いずれにせよ、前澤氏が2大アパレル企業の大株主になったとしても、所有株式数は数パーセント程度ですので、両社の経営に関して踏み込んだ提言や提案はしないものと思われます。
しかし、お互いに持ち合わせていないファッション領域をカバーし合っているユナイテッドアローズとアダストリアが協力するようなことがあれば、なかなか強力な存在になるでしょう。仮に前澤氏つながりで実現すれば面白いと思います。