ファッション領域で補完関係にある両社
さらに興味深いのは、ユナイテッドアローズとアダストリアは、もちろん資本関係はありませんが、アパレルビジネス業界においては補完関係にあるといえます。ユナイテッドアローズはラグジュアリーブランドほど高くはありませんが、高感度セレクトショップで比較的高価格品を得意としています。低価格ブランドとしては「コーエン」を持っているくらいです。
一方、「GLOBAL WORK」や「niko and…」などを展開するアダストリアは、中・低価格カジュアルが中心で、高価格帯や高感度商品をほぼ持っていません。かろうじて例外といえるのは「ハレ」くらいでしょうか。
もともとアダストリアは茨城県を拠点とするジーンズカジュアルショップ「ポイント」が原点です。その後、ジーンズカジュアルを基調とするSPA(製造小売)企業へと転身し、現在に至っています。出自から見てもジーンズカジュアル系に強く、その分野に秀でた人材が多いのも当然の帰結だといえます。
そのため、アダストリアにとっては高価格高感度ブランドやセレクトショップを傘下に収めるのは悲願ともいえる事案です。結果的にまとまらなかったものの、数年前には大手セレクトショップの買収に動いたという過去もあります。
そう考えると、この2社が提携するなり統合したほうが効果的ではないかと思えてきますが、そう簡単な話ではありません。
ユナイテッドアローズ創業者の重松理氏はすでに代表権もなく、取締役でもない名誉会長に退いていますが、アダストリアは拡大の立役者だった福田三千男氏が会長兼社長で今も君臨しています。同社は福田氏の祖父が大正時代に学生服屋として創業し、父が紳士服店にしてそれを福田氏が継いだ経緯があります。しかし、アダストリアを年商2200億円規模にまで育てたのはこの三千男氏なので実質的創業者ともいえます。
そのため、創業者の手が離れたユナイテッドアローズが条件次第で動いたとしても、実質的創業者がトップに君臨しているアダストリアのほうは動きにくいのではないかと思われ、提携などがすぐに起きるとは考えにくい状況でしょう。