「カツカレー」750円

 中條氏は20歳を過ぎた頃に入社し、洗い場を4年務めた後、揚場を担当、10年ほどで料理長に就任した。ちょうどその頃、神田はカレー激戦区として注目を浴びるようになったが、中條氏は「キッチン南海」に勤めて30年以上、変わらずに黙々とカレーを作り続けた。そして、カレー店がひしめく神保町で行列の絶えない人気店になっていった。

 外食でカツカレーを選ぶこともしばしばで、休日明けの月曜には無性に「南海」のカツカレーが食べたくなるというから筋金入りだ。

「このカツカレーが大好きなんです。ビルの老朽化で本店が閉じて、ここが開店するまで約1か月あったのですが、その間、ここのカツカレーが食べたくて食べたくて仕方ありませんでした(笑い)」

 最後ののれん分けとなったこの店で目指すことは、たったひとつだ。

「変わらない味だね、と言われるのがいちばん嬉しいです。だから、これからも味を変える気はないし、変えたくない。それが本店と変わらず通い詰めてくれているお客さんたちの願いであり、私の覚悟です」

60年愛され続けた老舗の最後ののれん分け店で腕を振るう

名物の行列は新しい店に引き継がれた

本店店内にあった看板も新店に移転

本店入口に飾られていた象のオブジェが出迎える

『キッチン南海』
住所:東京都千代田区神田神保町1-39-8
営業時間:月~土 11時15分~15時、17時~19時30分
休:日・祝

撮影■内海裕之

※週刊ポスト2020年9月11日号

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