伝説の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』。そこに出演していた俳優は、どんな思いで刑事たちを演じていたのか? 若手刑事・スニーカー(五代潤)として登場し、あだ名の通りドラマを全力疾走した山下真司が、秘話を明かす。
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ぼくにとって『太陽にほえろ!』は、役者としてスタートを切った初めてのドラマ。役柄同様、本当に“新人”だったんです。当時はファッションモデルだったので、役者としての知識や下積みがないまま最前線に立つことになり、そのプレッシャーに毎日打ちのめされていました。
なにせ周りは大スターやベテラン俳優揃い、番組は高視聴率。それに当時は撮り直しがきかないフィルム撮影だったのでNGは許されない。そのうえ台本を現場に持ち込めるのは石原裕次郎さんだけという暗黙のルールがあったので、せりふは事前に完璧に暗記するのが当たり前でした。
前日にしっかり用意をしておきたいところですが、撮影が終わるのは午前様のことが多く、ロケ先では夜中の3時近くまでスタッフと飲み明かすのが通例でした。二日酔いのまま朝は6時に起きて8時には撮影現場に行くというスケジュールを2年間、ほぼ毎日こなしたおかげで、数ページにわたる長いせりふや過密スケジュールなども、苦に感じなくなりましたね。この作品で鍛えられたおかげだと思っています。
アクションシーンも過酷でした。幅50cm程度しかない荒川の防波堤の上を走ったり、ビルの間を飛び渡ったり、走っている車から車へと飛び乗ったり…。大変でしたけど、犯人の車を追いかけて激突するようなカーアクションは楽しかった。
そんな現場だったので、最初の1年はずっと緊張で肩が凝っていました。退職という形で卒業することになったときは、さびしさとともに、プレッシャーからの解放感もありました。この作品が、ぼくの俳優人生の基盤となったのは確かですね。
※女性セブン2020年9月17日号