自己規制せずどんどんやれ!
昭和は、そんな不良な役者が多かったし、彼らの自由な表現が許されていました。なかでも、石原裕次郎さん率いる石原プロモーション(以下、石原プロ)が制作するドラマは破天荒で、ぼくもかなり遊ばせてもらいました。
ほかの制作会社は、トラブルが起こる前に回避するという考えなので、車を破壊するシーンを書くと、
「柏原さん、壊す車を1台減らしてくれませんか?」
と修正される。ところが石原プロの手にかかれば、脚本に書いた以上の数の車が派手に破壊されるんですよ。
「自己規制なんかしないで、どんどんやっちまえ!」
という考え方で、現場にも臆さず、巧みな交渉術でかけ合い、壮大なシーンを自由に書かせてくれました。『西部警察PART-I』の脚本を依頼されたときは、
「渋谷の某ビルにシースルーのエレベーターができたらしい。それをロケで使わせてくれたら一本書くよ」
と半ば冗談で言ったら、本当に交渉して使わせてくれました。ただ、東京でもっとも交通量が多い勝どき橋の下に爆弾を吊り下げ、橋が開いた瞬間に爆破するシーンを書きたいとお願いしたときは、さすがに許可が下りませんでした。でも交渉をしてくれただけでもすごいですよね。