「大統領に選んだ間違い」を理解して欲しい
メアリー:大統領就任から数か月後の2017年6月、ニューヨーク・タイムズのスザンヌ・クレイグという調査報道記者が訪ねてきました。彼女は私に「あなたはトランプ一家の資産報告書を持っているはずだ。ニューヨーク・タイムズはトランプ一家の資産状況について調べている。あなたの持っている文書はその調査取材に役立つ。ついては提供してもらえないだろうか」と言ってきたのです。その時は、私は返答しませんでした。
彼女はそれから数か月にわたり、「あなたはその文書を持っている。20年前にあなたと叔父さん、伯母さんたちとが関わり合いを持った(遺産相続に関する)訴訟の際に渡された文書のことだ」とそれを提供してくれるように執拗に要求してきました。
確かに私はその関連文書、4万ページの文書を保管していました。そこでそれをニューヨーク・タイムズの調査報道チームの記者に提供したのです。彼らは2018年10月にこれらの文書に基づく驚くべき記事を掲載しました(*注)。
【*注/2018年10月2日、ニューヨーク・タイムズは、トランプ大統領の父フレッドが、資産を妻子らに相続させるために行った贈与行為について、不正の疑いがあると告発する調査記事を掲載した】
その時、私はついに自分自身が何か具体的なことで貢献できたんだと感じました。そのことから本を書こうというアイディアが生まれてきたのです。なぜなら(トランプ氏が大統領になって以降)物事は日増しに悪くなってきていましたし、どんどんその度合いを深めていました。
もし私がドナルドという人物はどんな男でなぜこんなことをするのかを米国民に知らせることができたら、状況は変わるのではないか、と心から願い始めたのです。ドナルドを大統領執務室に入れてしまったことは間違いだったということを米国民に理解してもらえたら。そう願ったのが、この本を書く動機でした。