心理学者としての分析
──心理学者として、あなたは、トランプ氏の性格や指向性、社会通念は、遺伝的なものとお考えですか。あるいは幼少の頃からの両親の躾や小中学校での教育から形成されたのか、どうお考えですか。
メアリー:そうですね、一般論としては、成人の性格や言動が遺伝によるものなのか、環境が影響しているのか、一概には言えないと思います。トランプ家は家族として機能しないほど崩壊しており、ドナルドという人物はそのトランプ家が産み落とした産物だと思います。
これは伯母たちから聞いた話ですが、ドナルドが2歳半の時、彼の母親は重病を患い、1年ほどドナルドの面倒を見ることができませんでした。ドナルドはまだ幼く、なにがどうなっているのかわからないまま、自分は母親に捨てられたと思っていたのだと思います。ドナルドは寂しい思いをしたでしょうし、父親もドナルドの面倒は見られず、結局ドナルドの祖母が世話をすることになりました。ドナルドはほったらかしにされ、怯えて育てられたのです。
こうした「喪失」と「恐れ」と「孤独」といった感情に打ち勝とうとする強い防御意識が、ドナルドの深層心理の中に定着していったのです。ドナルドの父親は、これをドナルドのタフネスと勘違いしました。自分の後継者には殺し屋のような強靭な人物を望んでいたからです。
ドナルドの父親は、自分の過ちは絶対に認めない、謝らない息子を望んでいたのです。自分は偉いんだ、偉大なんだという自信満々な人間を望んでいたのです。私の父、フレッド・ジュニアは長男でしたが、父親が望むような人間ではない、と見られていました。
そこでドナルドの言動を見るにつけ、父親は自分の目標を達成させるためには(フレッド・ジュニアではなく)次男のドナルドだと決心し、それを最後まで変えませんでした。そしてドナルドを使いました。その結果、父親好みの、親切は軟弱以外のなにものでもないと信じ、冷酷であることを愉しみ、勝つためには手段など選ばないというドナルドのような人間が形成されてしまったのだと思います。