「接触通知が来たのにアプリを開いてみると、接触がなかったことになっていたというバグが発生していたり、相談センターに連絡すると『全員検査』と説明されたのに保健所からは検査ができない、など言われたりと、かなり混乱が広がっています」
民放の報道番組ディレクター・今田ゆき子さん(30代・仮名)の元には、こうした情報提供や相談が山のように届いていると言う。
「一部では、接触アプリで陽性者との接触が確認された場合、全員一律に検査ができる、と言われていますが、現段階では地域によってかなり対応に違いがあるようです。陽性者といっても、重い症状が出ている人との接触、もしくは陽性者であっても海外からの帰国者との接触がないと検査ができないようになっている場合もあるようで、勘違いした人の間で騒動になっています」(今田さん)
厚生労働省はアプリで濃厚接触の可能性が通知され、かつ本人が検査を希望した際には、公費負担で検査するよう各自治体に通達を出しているのだが、まだまだ伝わりきれていないというのが実情。問題はそれだけにとどまらない。
「通知が来たと思って、アプリをみても接触が確認されていないと出る。ただ、もっと詳しくデータを見ると、やはり接触の履歴が確認できる、という風に通知に関する不具合も出ているようで、報道機関にも情報提供が複数届いています。ただ、取材で関係各所に聞いてもはっきりした回答がもらえない状況なんです。通知を受けて驚いた市民方問い合わせを受けた病院など、現場の混乱に拍車がかかっています。検査を受けさせないための陰謀ではないか、というような声まで上がる始末です」(今田さん)
厚生労働省が新型コロナウイルス感染症対策テックチームと連携して開発したアプリ「COCOA」は、利用者からの声に応じて都度、修正版へ更新されている。不具合がない完成品に慣れている日本人にとって、利用しながら改善されていくというのは居心地が悪いかもしれないが、誰も体験したことがないウイルスに応じているのでやむを得ない側面なのだろう。だが、もう少し、そういった面での説明が繰り返されても良いのではないだろうか。
不安が広がる社会のなかで、伝言ゲームのように拡がっていく不確かな情報や誤解。もはや、どこに責任を求めていいのか、誰が責任を取るべきかもわからない。そうした状況下、アプリによって陽性者との接触があったと指摘されれば、気にしないわけがないし、自身が身近な大切な人にうつしてしまわないかと言う懸念から、社会活動を制限せざるを得ない。
これでは当然、差別や偏見が生まれ、余計なトラブルが発生してしまいかねない。もちろん、自分で考えて行動することは重要だし、それは尊重されるべきだ。ただし、Go Toトラベル、Go Toイート企画などでも見られるように、そうした判断や責任を為政者は国民に丸投げにし過ぎている。次の首相を決める自民党総裁選においても「助け合い」などと言ったキーワードが飛び交っているが、実際には「みなさんご自由に」「感染しても自己責任で」というのが本音ではないか、そう思わずにはいられない。