国内

コロナ接触アプリ通知 対応に地域差あり、振り回される人も

「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(時事通信フォト)

「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(時事通信フォト)

 厚生労働省がインストールを推奨している「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」は、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について通知をするアプリだ。通知はあくまで陽性者と接触した可能性を通知しているだけで、感染の事実を突きつけているわけではない。ところが、接触可能性の通知表示が出たことで、少なくない人が疑心暗鬼にとらわれている。ライターの森鷹久氏が、アプリ通知に利用者も行政も振り回され、混乱する様子についてレポートする。

 * * *
「ただ恐怖の中で過ごさねばならないだけ。いったい何のためのアプリなのか、全く分かりません」

 都内の設計事務所勤務・増本浩一さん(仮名・40代)は8月の終わり、自らのスマホに表示されたある通知を見て血の気が引いた。その通知とは、厚生労働省が全国民に登録を呼びかけている新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」からもたらされたものである。

「新型コロナウイルスにさらされた可能性がある、と表示されており、そこには日時と時間まで記してありました。その時刻、私は取引先の建築現場で2時間ほど滞在し、打ち合わせをしたり談笑したりしていました」(増本さん)

 驚いた増本さんは、さっそくアプリに表示されていた相談センターに電話。身近な人に感染者はおらず、もしかしたら自分が誰かにうつしているのかもしれない、それが妻か子供だとしたら、何をすべきなのか。不安に押しつぶされそうだったというが…。

「電話口の担当者は、咳や熱など症状があるかを聞いてきただけで、様子を見てください、と言うだけ。検査しなくていいのか、という問いにははっきり『できません』と告げられました」(増本さん)

 では通知にいったい何の意味があるのか、そう食い下がってみたものの、担当者は「そうですね、すいません」と繰り返すのみ。陽性者との接触があったとされる建築現場の責任者に知らせたが、増本さんのように通知を受け取った人間はほかにはいない、というのである。

「結局その日から会社にも寄らず、自宅にも帰らず、近くのビジネスホテルで一週間を過ごしました。少し咳が出たり頭痛がするだけで、症状が出たのか?と生きた心地がしませんでした。ウイルスに感染した可能性がある、と知らされただけで何もできない。妻や子供も私と接触をしていたわけですが、それを隠して仕事や学校に行っていたんです」

 現在はすでに自宅に戻っているというが、今も会社には出ていないという増本さん。増元さんから連絡を受けた取引先の責任者も、関係各所に相談したが、特に何をするわけでもなく、今もなお普通に業務を行なっている。保健所などからは「気をつけて普段通りの生活を」と言われたが、少なくとも二週間が経過しないと家族と安心して会うこともできなかった。

 アプリを巡っては別の騒動も起きている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン