いしだあゆみも熱演

 初めて尽くしのため、当然苦労は多い。鎌田さんはドラマを書く際、舞台となる場所と、物語を彩る音楽を決めてから執筆にかかるが、その場所が決まらず、早速難航した。

「音楽はプロデューサー、ディレクター、音楽出版社、ぼくとで、当時30~40代が青春時代に聴いていた歌を調べ、ボブ・ディランの『風に吹かれて』にしようと意見が一致。これはすんなり決まったのですが、ドラマの舞台となる場所探しは、一筋縄ではいきませんでした」

 当時は一億総中流傾向にあり、物語の主人公と同世代の視聴者は中流家庭が多い。彼らの生活水準とかけ離れた場所を舞台にすると共感してもらえない。とはいえ、憧れも抱けるようにと、普通の暮らしより少し背伸びした、都会的な雰囲気の生活が似合う場所を探した。

「舞台は、庶民的かつ少し都会的な街でないといけませんでした。それで、東京やその近郊の都市をくまなく探し、ようやく見つけたのが、当時の制作スタッフが住んでいた多摩センター周辺。この街にあるスタッフの家をそのままセットで造りました。駅のモデルは当時開発が進んでいた、たまプラーザ駅にして、物語を作ることにしました」

 ドラマのヒットにより、舞台となった、東急田園都市線沿線のたまプラーザ駅周辺をはじめとする新興住宅地に戸建てを構える若い核家族世帯が増えた。都市開発が進み、ドラマ終了後、この地域の地価は急騰した。そのため、いまではセレブの街の様相を呈しているが、当時はまだ、“新興の街”だったのだ。

※女性セブン2020年10月8日号

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