「仕事を続けながら治療を受けられたら便利だっていう患者さんはたくさんいると思うけど、日常生活から離れることがとても大事なんだ、と。そこから離れることで、自分がいままでどうやって生きてきたのかを客観的に見直せる。だから“鹿児島にクリニックがあることが大事で、東京でやってはダメですよ”とも何度か言われました。簡単に治ってしまったら、命に対して感謝することもない。大事な大事な命なんだと、しみじみ感じてほしいともおっしゃっていました」(植松さん)
交流は鹿児島だけにとどまらなかった。植松さんが上京する際に時間を合わせて同じ飛行機に乗ったり、ザ・タイガースのコンサートを一緒に見に行ったこともあるという。2013年12月、「44年ぶりの再結成」と銘打って1か月間だけ復活した、ザ・タイガースのオリジナルメンバーによる武道館コンサートだ。
「希林さんと内田裕也さん(享年79)が結婚するときの仲人が沢田研二さん(72才)だったから、ザ・タイガースのことは昔から好きだったみたい。コンサートが終わった後は、ザ・タイガースゆかりのイタリアンレストラン『キャンティ』で一緒にワインを飲みました」(植松さん)
樹木さんの治療中、植松さんは裕也さんとも会う予定があったという。
「まだ希林さんが全然元気だった頃に、裕也さんが一緒に鹿児島に来て、ぼくに挨拶すると言っていたようで。予定の日も決まっていました。ところがその日に台風が来てしまって。実際には飛行機は飛んだんですが、裕也さんが“台風で危険だからやめよう”って。結局、会えずじまいでした」(植松さん)