マスクの「地産地消」掲げるアイリスオーヤマ
アイリスオーヤマは不織布などの材料も含め、中国などの企業に頼らず、ほぼすべてを国内で作れるようにした。
6月から宮城県内のプラスチック製品を作る角田工場で、家庭用の不織布マスクの製造を始め、8月からは月産1億5000万枚を生産する体制を整えた。流行語にもなった“アベノマスク”は1億2000万枚なので、アイリスオーヤマはこれを凌駕する。
前述したように、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は今年2月中旬以降、マスク増産に向け、設備投資を行うメーカーに補助金を出す取り組みを行ってきた。アイリスオーヤマはこれを活用して角田工場を約30億円かけて改修。中国の大連工場、蘇州工場と合わせ、月に2億3000万枚の家庭用マスクを国内に供給できる体制が出来上がったという。
工場の設備投資でマスク増産体制を整えたアイリスオーヤマ
さらに、アイリスオーヤマは10月以降、米国やフランスでマスクの現地生産を始める。「マスクを着用する習慣がなかった欧米でも根付きつつあり、マスクの需要は世界規模で高まっている」と大山健太郎会長は判断した。現地生産したものは、その地で売る。「地産地消」そのものである。
ユニ・チャームは輸出も視野
そして、国内マスク最大手のユニ・チャームは1月下旬からマスクの生産を24時間体制に切り替え、現在は通常の3倍の月約1億2000万枚を生産している。また、10月以降には新たな設備を導入してさらに上積みする方針だ。国内の感染状況をみながら、余裕が出てくれば輸出に回すという。
国内最大手、ユニ・チャームのマスク
具体的には、2021年から「超快適」「超立体」といった高価格帯の家庭用の不織布マスクをタイやインドに月2000万枚、供給する。国産マスク大手が大規模に輸出するのは初めての試みだ。いま、中国がマスクを含む繊維製品の世界輸出の4割強を占めているが、ユニ・チャームは高品質のメイド・イン・ジャパンのマスクで中国製に対抗する。
家庭用の不織布マスクの覇権争いは、首位のユニ・チャームを、大増産体制を完了したアイリスオーヤマが追う展開となりそうだ。