新大久保では50枚入り499円まで値崩れ
9月の4連休前の夕刻、“マスクのメッカ”東京・新大久保を歩いてみた。ドラッグストアなど、あらゆる店頭からマスクが姿を消した3月、ありふれた品質のマスクが1箱(50枚入り)4980円の超高値で売られていた場所だ。
路上で売られていたマスクは700円台、600円台、500円台といった値札が目立った。もちろん50枚入りで、最安値は499円のもの。インド人とおぼしき売り子が手持ち無沙汰に立っていた。商品には〈1回限りの非医療用。4時間以上の使用には適していない〉との但し書きがついている。
素材本体はポリプロピレン、耳ひもの部分はポリエステル、ポリウレタン。メイド・イン・チャイナとあるが、メーカー名、住所とも、まともな日本語にはなっていない。多分、でたらめなのだろう。大量に輸入したマスクを日本で小分けにして、箱詰めしたと類推できる仕上がりになっている。
道をへだてた反対側には中堅のドラッグストアがあり、ここで「nepia 鼻セレブ」(王子ネピア、日本製)を売っていた。17.5cm×9.5cmのふつうサイズだが、「1日中、口にはりつかない 口元空間マスク」がセールスポイントで、5枚入りが547円だった。
こうして50枚499円で叩き売られているマスクがある一方、高品質で相対的に高い価格を維持している日本製マスクもある。ファッションメーカーから出ているマスクは1枚2000円台でも売り切れのものがある。
中国、ベトナムなどを中心に東南アジアから輸入されたマスクの国内在庫(デッド・ストック)はどのくらいあるのだろうか。零細な業者はマスクの山にうずもれ、瀕死の状態にある。品質が劣り、価格競争力を失ったマスクの明日を、連休前の新大久保で見た思いがした。
日本衛生材料工業連合会によると、現在の国内のマスク供給量は月10億枚。3月に比べて7割増加した。国産品が占める割合も2019年度の2割から5割弱まで高まった。洗って繰り返し使えるマスクの普及もあり、一時期の品薄感は薄れている。
とはいえ、副業としてマスクを作っていたメーカーは、品質面でのレベルアップを図るのが難しいことから、いずれ撤退していくことになろう。