さて、テレワークの拡大は今までの「都心」、「駅近」重視の住まい選びから、前述のような「都心脱出」と郊外や遠隔地での「中古戸建て」、あるいは郊外型の「大規模複合開発」へと人気のトレンドを変化させるのか。
確かに、こういった「都心脱出」の流れは無視できるほどの小さな動きではなくなった。4月初旬に発せられた緊急事態宣言以降、おそらく数千人が都心から遠隔郊外への住み替えを実行したと推測される。
都心には都心でしか得られない魅力がある。東京は世界のどこよりも美味しいものをリーズナブルな価格で食べられる街ではないか。今はコロナでかなり少なくはなくなったが、様々なエンターテインメントも楽しめる。世界の一流芸術に触れる機会も多いのも、東京ならではの魅力だ。
一方、郊外には自然の豊かさがある。湘南や九十九里に住み替えた人は、毎日のようにサーフィンやフィッシングを楽しんでいることだろう。熱海や湯沢には温泉がある。そして空気がきれいだ。
どちらを選ぶのかは、各人の価値観や経済力に拠る。遠隔郊外なら都心に50平方メートル程度の狭いマンションを購入する予算の半分程度で、その倍以上の面積や部屋数の中古戸建てを得ることができる。戸建てなら駐車場が付いているのが普通だ。
駅から15分も歩くような郊外型新築大規模マンションなら、80平方メートルくらいの住戸を都心50平方メートルの6割程度の価格で購入できるはず。毎日通勤しなくてもよいのなら、当然そういう選択肢もあり得る。
今後、こういう選択を行う動きは大きなトレンドを形成するほどではないが、途絶えることなく続きそうだ。しかし、都心と遠隔郊外との間で厳然と存在している「資産価値のバランス」を崩すほどの流れにはならないはずだ。