母親がペコペコ謝る姿を「赤べこ」にたとえた

「たとえ話」に宿る“愛”

 岸田さんのエッセイは、時間をかけて練りに練って完成させたもののようにも見えるし、感情の赴くまま勢いで完成させたようにも見える。

「書くテーマを決める時、じっくり時間をかけて考えるということはしません。私が好きなものや好きな家族のことだったり、自分の中にある言葉にならないモヤモヤした感情にふっと気付きが生まれた瞬間に、ワッと一気に書き上げることが多いです。自分の中にあるその時の感情の動きをそのまま表現したいので、熱が冷めないうちにとにかく速くたくさん書くから、100文字で済むことを2000文字で書いてしまう(笑い)。私なりの『愛のおすそ分け』と言っています。

 私のエッセイにたとえ話が多いのも、伝えたい“愛”が溢れすぎているから。辞書に載っている言葉では表現できないんですよ。愛を120%伝える方法って、たとえ話しかないと思います。それに、たとえ話が面白い人って感情を伝えるのが上手ですよね。私が憧れている漫画家のさくらももこさんや、好きな漫画『波よ聞いてくれ』(講談社)の主人公もたとえ話がとても上手。そういう自分が好きなものにも強く影響を受けていると思います」

 80万PVを獲得した『弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった』では、弟の良太くんが、コンビニで万引きをしたと勘違いした母親のひろ実さんが「すみせん、すみません」とペコペコ頭を下げる姿を「赤べこ」に例えて表現している。

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