「赤べこって、ちょっと間抜けで可愛いじゃないですか。あの時、母がメチャメチャ謝ってるのに、当事者の弟がぼうっと隣で突っ立っているのが面白くて(笑い)」。楽しそうにそう語る岸田さん。実際は本当の赤べこのようだったかは分からないが、赤べこに例えて “盛る”ことで読み手が情景を想像しやすくなる。関西で育った岸田さんならではのスタイルだろう。
最後に、今後どんな作家になりたいかを聞いてみた。
「最初に“作家”と名乗る時、ある新聞社の人に『あの林真理子さんですら、直木賞をとってから作家と名乗り始めたほどだから、今作家と名乗るのは文芸に詳しい人に笑われるよ』、と言われました。それでも、作家と名乗ることに決めたのは、文章だけを書く作家というよりは、『岸田奈美』という私自身の人生を作品として見せて行ける作家になりたいと思ったから。小説や児童書、はたまたラジオやテレビなど、アウトプットの形はどう変わっても、岸田奈美という作品を作り続けていくことを目標に、“作家”を続けていきたいと思っています」
◆取材・文/小山内麗香、撮影/黒石あみ