井口監督のマネージメントが光る(時事通信フォト)

井口監督のマネージメントが光る(時事通信フォト)

井口監督は買い物上手

 そのアットホームな集団に適度な競争意識を植えつけたのが井口監督だ。これまで補強に積極的ではなかったロッテだが昨季から積極的な選手の獲得に動き、昨シーズン中に日ハムの主軸だったレアード、オフには「球団史上初」と話題になった福田、美馬のFA2人獲りを敢行。さらにメジャーからマーティンを獲得し、阪神を戦力外になった鳥谷敬にも手を伸ばした。今シーズン中も澤村に加え、元中日でメジャー59勝のチェン・ウェインを獲得している。

「井口監督はお買い得選手を見極めるのが上手い。レアードは年俸2億円を超えていますが、日ハム時代に本塁打王を獲得した実績からすれば相場以下。FAの2人も今季は福田が3600万円、美馬も6500万円と格安だった(契約は福田が4年6億円、美馬が3年5億円)。チェンの年俸も3000万円。年齢やブランクからエース級の活躍は難しいだろうが、経験がモノをいうポストシーズンでは戦力になるでしょう」(ロッテ番記者)

 その一方で、チームの顔だった涌井秀章や鈴木大地を放出している。ロッテOBで名球会メンバーの山崎裕之氏がいう。

「これでチーム内に危機感が生まれました。チーム内には角中、清田育宏といった10年選手もいるが、過去の実績だけでは使ってもらえない。井口監督のフラットな起用で若手には刺激が生まれている。高卒3年目の安田尚憲の将来性を見据えて4番で起用を続けているし、二軍にはかつての守護神・内竜也や大谷智久などのベテランに交じってルーキーが競っている。井口監督の巧みな選手操縦術の成果だと思います」

 井口監督はドラフトで藤原恭大や佐々木朗希といった目玉選手を引き当ててきた。彼らの成長如何で黄金期も夢ではない。

「残された課題は集客に結びついていないこと。昨年の入場者数は12球団で最少で、これだけ好調でもホームゲームの観客動員数は上限人数の1万3500人にはほど遠い。非公表のファンクラブの人数も12球団のなかで2番目に少ないと言われている」(前出・ロッテ番)

 日本シリーズ進出となれば、SBと同様に豊富な資金力をバックに巨大戦力を誇る巨人との対戦になるが、「CSがあることで、適度な緊張感を維持し、チームに勢いがつけられるパが断然有利です」(遠山氏)であり、澤村が古巣にどう“恩返し”するかも見ものだ。

“貧しいカモメ”はどこまで飛んでいくのだろう。

※週刊ポスト2020年10月16・23日号

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