首都圏が“危険水域”に
【1】首都圏・東海警戒ゾーン
山梨県にある電子基準点「小菅A」で8.26cm、静岡県にある「大仁」で7.25cmの異常変動が観測されたほか、東京から静岡にかけて異常変動が集中している。村井氏が解説する。
「マップには反映されていませんが、最新の国土地理院の速報データでは、9月中旬に神奈川の『大井』でも9cmの大きな異常変動が現われました。大井町は1923年に発生して10万人の死者・行方不明者を出した関東大震災の震源地のひとつとされている場所です。約100年を経て大きな異常変動が観測されたことを懸念しています」
首都圏・東海警戒ゾーン内には他にも大きな歪みが溜まっている地域があるという。
「8月下旬以降、伊豆諸島、伊豆半島、駿河湾沿いで、東西南北の異なる方向に地表が動いているため、非常に不安定な状態が続いていると考えられます。千葉県では、基準点『千葉花見川』が隆起する一方、30kmほどしか離れていない『富里』は沈降しており、2つの基準点の間の高低差は9月上旬に9.8cmに達しています。過去のデータから6cm以上の高低差は“危険水域”と言える。『大井』や『千葉花見川』『富里』のように、神奈川・千葉を震源とする地震でも、過去の大地震では地盤が緩い都心で最も甚大な被害が出ているので警戒が必要です」(村井氏)
【2】北陸・信越警戒ゾーン
基準点「福井」の7.12cmなど、異常変動が福井県に集中している。
「9月4日に最大震度5弱の福井県嶺北地震が起きましたが、その後も石川県の能登半島から福井県にかけて非常に活発な水平方向の動きが見られるため、まだエネルギーは放出され尽くしていないと考えられます。
この地域では、9月末までの4か月で、長野と岐阜の県境にある長野県中部で45回、岐阜県飛騨地方で25回の小地震が起きている。過去には1965年8月から約5年半の間に長野市周辺で、震度5以上の地震が10回も発生した松代群発地震の前例もある。警戒を怠るべきではありません」(村井氏)
【3】東北地方警戒ゾーン
岩手県にある基準点「岩手松尾」で9.04cm、福島県にある「二本松」で8.26cmと、奥羽山脈沿いで特に大きな異常変動が見られる。
「青森県と岩手県北部では地表が南東方向に向かって活発に動いている。しかし、福島県南部と茨城県北部には大きな動きが見られない。そのギャップから判断して、東北地方には大きな歪みが溜まっていると考えられます」(村井氏)