国内

誰かを「コロナ脳」呼ばわりして、何かいいことあるはずがない

「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(時事通信フォト)

「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」(時事通信フォト)

 コミュニケーションのあり方は多様化している。もちろん言葉の選び方には気をつけるべきだろう。コラムニストのオバタカズユキ氏が指摘する。

 * * *
 今年の春に新型コロナの緊急事態宣言が発令されて以来、とんとご無沙汰だった馴染みのバーで先日飲んだ。途中から客が私一人になって、店がいかにコロナに振り回されてきたか、たっぷりマスターの愚痴を聞くことになった。ひとしきり話し終えた後、彼がこんな言葉を漏らした。

「いやー、いろいろ話せてちょっと気持ちが楽になりましたよ。店でコロナの話はタブーですからねえ」

 タブー? その意味するところを尋ねてみると、コロナについてはお客によって考え方や感じ方がさまざまで、かつ、意見が対立しやすいので、話題にするのを極力避けてきたとのこと。実際に、この話題で店内が険悪な空気になったこともあるという。

 酒場で政治と宗教とプロ野球について話をすることはタブーだと、昔から言われているが、今日ではそれにコロナが加わったようである。たしかに、感染予防のためにどれだけ行動自粛するかという点でも、人によってかなりの違いがある。私のように、静かにグラスを傾けるバーで楽しむぐらいはOKだろう、という人間もいれば、そういう夜遊びなんて危なっかしくてとんでもないと思う人間もいる。

 明らかな三密状態は避けようとか、手洗いやアルコール消毒はマメにしましょうとか、他人に伝染さないためにマスクをしましょうとかいったあたりは、アンダーコロナ社会におけるマナーとして、ほとんどの日本人が共有していると思うが、そこからちょっと離れたことになると意外に人それぞれだ。

 いや、上記のうちマスクについては、最近、ちょっと状況が変わってきている気もする。誰から強制されたわけでもないのに、みんな外出時にマスクを着用している日本人の同調性について、欧米人は「なぜ?」と不思議に思うそうだが、このところは夜の繁華街で主に若い人たちがノーマスクでわいわい騒いでいる姿をよく目にする。そのまま電車に乗って大声でのお喋りを続ける連中も少なからずいて、自粛について比較的ゆるめな私でも「ちょっとやばい感じだな……」と戸惑ったりしている。

「マスク信者」に「マスク原理主義」

 若い人はもし感染しても滅多に重症化しないから、飲んだ勢いで、「知ったことかー、俺たちは自由だー」というノリになってしまうのだろう。気持ちはわからないでもないので、そうした姿を見かけてもスルーしているが、もし私が「君たち、電車内ではマスクをしようよ」と注意したらどうなるか。案外、素直に従ってくれる気もするけれども、中には舌打ちして「(このマスク信者め……)」と睨み返してくる者も混じっていそうだ。いや、そういう目で自分が見られたくないがゆえに、私はノーマスクで騒いでいる若者を注意できないのかもしれない。

「マスク信者」に「マスク原理主義」。科学的にどれだけ感染予防効果があるのか、確実なエビデンスがあるわけではないマスクの着用をとにかく絶対視し、そこから先は思考ストップしてしまっている人たちのことを、ネット上ではかなり早い時期からそんなスラングで侮蔑する向きがある。

 侮蔑。そう、「マスク信者」や「マスク原理主義」といったスラングを使う人たちは、たいてい上から目線だ。そして、対象者を全否定している感がある。攻撃性が強い。

 科学的に無知で、自分が無知であることの自覚もなく、ただひたすらにマスク着用を強要してくる人がいたら、なるほどウザい。侮蔑語で斬って捨てたくもなる。ただ、人にはそれぞれの事情もあり、マスク着用を前提にやっていかなきゃいけない場合もある、といった想像力もないといけない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン