ビジネス

シエンタ販売減でミニバン離れか コロナでクルマ選びに変化

かつてはミニバンで初の普通車販売台数ナンバーワンだったトヨタ「シエンタ」

かつてはミニバンで初の普通車販売台数ナンバーワンだったトヨタ「シエンタ」

 コロナショックで大揺れの自動車市場だが、9月の新車販売台数は前年同月比15.6%減まで回復。6月は同26%減だったので、景気の先行き不透明感という逆風を受けながら健闘している印象だ。その中でつい最近まで高い人気を誇っていたのにトップ圏外へと去ってしまったモデルがある。3列シートの小型ミニバン「シエンタ」(トヨタ自動車)だ。その理由を探ると、じつに様々な変化が見えてきた。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。

 * * *
 日本自動車販売協会連合会が発表した9月の乗用車の販売ランキング(軽を除く)における「シエンタ」の順位は18位。台数は3614台で、前年同月比で26.7%しか売れていない。昨年8月、9月と2か月連続でミニバンとしては初めて普通車の販売台数ナンバーワンとなっていたのがウソのような順位の下げっぷりである。

 なぜシエンタがそんなに減ってしまったのか。これにはトヨタのお家事情がある。シエンタを生産しているのは製造子会社、トヨタ自動車東日本の宮城・大衡工場だが、ここは目下、人気を博しているサブコンパクトSUVの新鋭モデル「ヤリスクロス」の生産で大わらわ。それに押される形でシエンタの生産を絞られたものとみられる。販売台数は激減しているが、納期は2~3か月とむしろ長期化している。

 タネが割れれば何のこともない……と思いきや、販売会社数社に取材してみると、現在の販売減とは関係なく、顧客の志向変化がミニバン販売に静かに影響を与えているという。

「最初に異変を感じたのはコロナ前。『ライズ』を発売したときでした」

 東京東部のトヨタ系販売会社幹部はこう語り、続ける。

「昨年売れまくった時は、200万円台前半のファミリーカーの主役でした。その流れに変化が生じたのは小型SUVの『ライズ』(ダイハツ『ロッキー』のOEMモデル)の発売です。

 もともとシエンタは大家族のお客様ではなく、子供さんが1人ないし2人のファミリーが主だったのですが、ライズの登場で何もミニバンでなくてもいいのではないかと考えるお客様が急に増えました。実際、シエンタを検討に来られてライズを成約されたケースは珍しくありません」

ミニバンの顧客層も奪っている小型SUV「ライズ」

ミニバンの顧客層も奪っている小型SUV「ライズ」

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン