ピエール瀧、沢尻エリカ、そして伊勢谷友介と、著名人の薬物逮捕劇が続くが、昨今は「たかが薬で」と、逮捕者を擁護する声が多い。とりわけ伊勢谷の逮捕時は、「大麻くらいでなぜこんなに叩かれるのか」という声がネット上に溢れた。近年は大麻解禁運動も注目されているが、そうした風潮に対し、「危険だ!」と語気を強める人がいる。厚労省麻薬取締官、通称“マトリ”として38年間任務にあたった瀬戸晴海氏だ。2014年から関東信越厚生局麻薬取締部部長を務めた瀬戸氏が「大麻の真実」を語った。
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近年、大麻取締法違反での検挙数が増加しています。警察庁の発表によれば、今年上半期(1~6月)の大麻の密売、所持の摘発件数は、前年同期比で183人多い2261人。過去最多の数字です。これは警察だけの数字で、麻薬取締部を含めるとさらに多いでしょう。
要因のひとつは室内での栽培事案が爆発的に増えていること。大麻を海外から密輸する必要がなくなってきている。そしてもうひとつがSNS経由の密売です。「手押し」「野菜」などの隠語が飛び交い、価格も下がっている。5000円程度で1グラムが買えます(3~4回分の吸引に相当)。YouTubeには大麻の栽培法等に関する解説動画が平然とアップされており、若者を中心に大麻への抵抗感がどんどん薄れています。
背景にあるのが、このところよく耳にする「大麻=安全」という言説です。医療用で使われている、タバコより安全、後遺症もなく無害……といったことを主張する人も多いですが、膨大な数の大麻乱用者をこの目で見てきた立場として、はっきりと言っておきます。絶対に手を出すべきではありません。
まず、大麻を長期間常用すると、「無動機症候群」といって、物事に対する興味や関心が薄れ、思考力、注意力、集中力が低下し、無気力などの「うつ状態」に陥るケースが多い。捜査現場で、こうしたうつ状態に苦しむ若者の姿を何度見たか分かりません。大麻は「うつ病の予防にいい」と主張する人もいますが、現実にはうつ病を招く薬物なのです。