生前、舞台終演後に帰宅する八千草さん(2018年8月)

自宅の登記簿を見ると、今年2月、3人に遺贈の手続きが取られていた。そのうち2人は、八千草さんと谷口さん、それぞれの遠戚にあたる人、もう1人は八千草さんの所属事務所社長のAさんだ。

「3人とも八千草さんの身の回りのお世話をしたり、一緒に旅行したり、彼女が入院中に愛犬の散歩をするなど、生前かなり親しくしていた間柄のかたがたです。“自宅をこのままの形で残したい”という八千草さんの思いを汲んで、自宅を取り壊さずそのまま売却して現金化し、それを元手にして相続税を払う予定だったと聞きました」(テレビ局関係者)

 しかし、八千草さんの願いはかなわず、自宅は即解体された。

「2500万円? そんなもんじゃない」

 八千草さんの一周忌を前に、事態は一変していた。

「予想外のことばかり起きてしまい……背に腹は代えられない思いで解体となってしまったのです」

 こう話すのは、Aさんだ。

「八千草は“できることなら、個人のかたに買っていただきたい”と望んでいました。“リフォームするとしても、何かしらあの家のにおいのようなものが残ればうれしい”と話していたんです。そのため、当初は不動産業者さんではなく、個人のかたの買い手を探していました」

 しかし、動き始めた矢先にコロナ禍に見舞われる。先行き不安な中、個人で不動産を買おうとする人は激減。しかも、土地だけで3億円もするような大型物件ゆえ、なかなか買い手が見つからなかったという。

「仲介をお願いしていた業者さんにも、“お気持ちはわかりますが、この状況で個人相手に売るのは難しいと思いますよ”と言われてしまいまして……。もう少し粘ることも考えたのですが、私たちには“タイムリミット”が迫っていたんです。仕方なく、路線変更して、業者さんに買い取っていただくことも視野に入れ始めたんです」(前出・Aさん)

 今年の9月末、売却が済み、豪邸は不動産販売業者のものとなった。今後は業者がこの豪邸を一般向けに売っていくことになる。都会では、広すぎたり、こだわりのある仕様の家だと買い手がつかないことが多いため、取り壊して更地にし、広い土地を分割して売るのが一般的だ。

 おそらく八千草さんの豪邸もそのようなケースに当てはまるのだろう。彼女が愛したこだわりの邸宅は、すでに取り壊され、ほぼ面影を残していない。個人の買い手を探すことを諦めたのは、Aさんが語ったタイムリミットが大きな理由だという。それは、相続税の支払いだ。

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