法定相続人でない人が遺贈を受ける場合、通常の相続よりも2割加算された額を相続税として支払う必要があり、しかも控除もない。そのため、相続税の支払い額を知って仰天する人も多い。
「実は、売却する前に相続税の支払期限が来たんですよ。金額を見たら、“うわー”って、ビックリするぐらいの額で(笑い)。一部の報道では2500万円と書かれていましたが、そんなもんじゃないですよ……」(前出・Aさん)
数千万円という相続税の支払いは、大きな負担だったであろう。自宅は売却しない限り現金化されず、多額の支払いだけがのしかかる。Aさんたちは泣く泣く、不動産業者への売却を決めた。そうすれば相続税を支払っても3人の手元には現金が残る。それを等分したのである。
八千草さんのケースの場合は、自宅の売却にこぎつけるまでの間にも、さまざまな“ハードル”があった。Aさんは、八千草さんが亡くなった後、庭や室内の手入れのため、毎日欠かすことなく自宅に通い続けていたという。
「庭は植木屋さんにお願いしたり、池のお魚や生き物を業者さんに引き取ってもらったり。やるべきことは山のようにありました」(前出・Aさん)
自宅に残っていた数々の遺品は、八千草さんが生前決めていた希望に従って知人などに分けるといった作業に没頭してきたという。
「膨大な量でしたが、ようやく終わったという感じです。作業の間は、“これ終わらないんじゃないかなぁ”なんて感じて、ヒーヒー言っていたんですが、終わってしまうと、心にぽっかり穴が空いたようで、とても寂しいです」(前出・Aさん)
自宅を整理するまで、なんと10か月もかかったという。
「遺品の整理をしている最中に、“こんなものが出てきた!”とか“このとき、あんなことがあったんだよなぁ”と感慨に浸ってしまうものですから余計に時間がかかってしまって……。
たしかに大変な作業ではありましたが、この10か月は、八千草との思い出をかみしめる大切な時間でもあったと思うんですよ。それだけに、家を取り壊さないといけないという結果になってしまい、残念ですし、悔しいんです……」(前出・Aさん)
こだわりの自宅をそのままの形で残すことはかなわなかったが、家を愛し、周囲の人を大切にした八千草さんの思いは、目に見えずとも、この地にずっと生き続けることだろう。
※女性セブン2020年11月5・12日号