寿都町と神恵内村は、ともに漁業しか目立った産業がなく、人口減少が続いているので、最終処分場が立地すれば雇用も生まれて地域の活性化につながると期待しているという。

 ただし、北海道は2000年に、核のゴミは「受け入れ難い」とする条例を制定した。鈴木直道知事も第二段階に進んで国に意見を聴かれたら反対する姿勢だとされるが、彼が夕張市長だった時からの「後ろ盾」で、同じ法政大学の大先輩でもある菅義偉首相に同意するよう要請されたら、従わざるを得ないだろう。

 この膨大な核のゴミは、国民が電力を消費した結果として出たものだから、国内で最終処分するしかない。だが、これはスウェーデンとフィンランド以外、どの国も最終的な保管場所が決まっていないほどの「難問」である。「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」で、放射性廃棄物は「それが発生した国で処分されるべきもの」と定められているため、広大な国土を持つ他の国に頼ることもできない。

 すなわち最終処分場問題は、電力会社が一部地域の住民と話をつければよいというレベルの話ではなく、原子力行政を推進してきた「国家の問題」として政府が国民にきちんと説明し、広く議論すべきなのだ。資源エネルギー庁は3年前から全国で説明会を開いているそうだが、国民的な話題になっているとは言えない。

 私自身は、以前から最終処分場は福島第一原発がある双葉町と大熊町にするしかないと考えている。爆発事故を起こした原子炉の敷地内などはもはやほぼ永久に居住不可能だと思われるから、契約上は廃炉にして更地に戻した後で地元に返すことになっているが、たぶん地元も持て余すだけだろう。したがって、その周辺も含めて国有地として買い上げ、住民には“迷惑料”込みで手厚い補償をすべきだと思う。そこを最終処分場とするなら、比較的コンセンサスが得やすいのではないか。無人島などに持っていくという手もあるが、そういう案も含め、国民的な議論を尽くさねばならないのだ。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。

※週刊ポスト2020年11月6・13日号

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン