国内

大前研一氏「核のゴミ」最終処分場問題は国民的議論にすべきだ

「核のゴミ」の最終処分場選定に向け、全国の自治体と調整が進められているが…

「核のゴミ」の最終処分場選定に向け、全国の自治体と調整が進められているが…(イラスト/井川泰年)

 受け入れを表明した北海道寿都町の町長宅が放火されるなど「核のゴミ」処分場をめぐる騒動が続いている。高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、いったいどこが適切なのか、経営コンサルタントの大前研一氏が検証し、考察する。

 * * *
 原子力発電所の使用済み核燃料を再処理した際に出る高レベル放射性廃棄物「核のゴミ」の最終処分場について、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が国の選定プロセスに応募することを表明した。応募は2007年の高知県東洋町以来(その後撤回)13年ぶりとなる。

 国は「核のゴミ」をガラス固化体にして地下300m以深に埋める「地層処分」にする方針だが、その場所(最終処分場)は、いまだに決まっていない。ガラス固化技術も未完成だ。

 さらに、使用済み核燃料から再利用可能なウランとプルトニウムを取り出して「プルサーマル炉」で使うMOX(モックス)燃料やウラン燃料にリサイクルする青森県の「六ヶ所再処理工場」も、まだ建設中(2022年度上期に竣工予定)だ。

 また、MOX燃料に再利用されるウランとプルトニウムは少量でしかなく、使用済みMOX燃料の再処理についても決まっていない。国が目指している「核燃料サイクル」は、絵に描いた餅なのである。

 したがって、使用済み核燃料は現在、各原発の原子炉建屋内にある燃料プールで冷却し、引き続き燃料棒のまま貯蔵されている。つまり日本の原発は、しばしば揶揄されているように「トイレのないマンション」のような状態なのだ。

 しかも、すでに各原発の燃料プールの貯蔵容量は限界に近づいている。このため、特殊な金属容器(キャスク)で保管する「乾式貯蔵」という方式が、青森県むつ市に建設中の中間貯蔵施設などで予定されている。だが、六ヶ所再処理工場が稼働し、ガラス固化技術が完成したとしても、最終処分場がなければ、今度は「核のゴミ」が溜まり続けるので、“糞詰まり状態”であることに変わりはない。そうした中で、今回、ようやく寿都町と神恵内村が最終処分場の候補地として手を挙げたのである。

 その背景には、最終処分場がもたらす交付金がある。選定プロセスは、第一段階の「文献調査」(2年間)で最大20億円、第二段階の「概要調査」(4年間)で最大70億円の交付金が国から出る。原発や再処理工場などの立地と同じく、札束で地元の頬を叩くやり方だ。

関連記事

トピックス

所属事務所は不倫を否定(時事通信フォト)
《星野源と新垣結衣が完全否定》「ネカフェ生活」NHK・林田理沙アナとの疑惑拡散の背景「事務所が異例の高速対応」をした理由
NEWSポストセブン
幼稚園をご訪問され、子供たちに声を掛けられた天皇陛下
天皇皇后両陛下が幼稚園をご訪問 工作の様子を見守られ「どんなものができるのかな」と笑顔で声をかけられる場面も
女性セブン
杉咲花と若葉竜也に熱愛が発覚
【初ロマンススクープ】杉咲花が若葉竜也と交際!自宅でお泊り 『アンメット』での共演を機に距離縮まる
女性セブン
5月に入り病状が急変し、帰らぬ人となった中尾彬さん
【中尾彬さん逝去】数か月体調優れず、5月に入って容体が急変 葬儀は近親者のみ、妻・池波志乃さんは憔悴しながらも参列者に感謝
女性セブン
新しいヘアースタイルの大谷翔平
《大谷翔平の新ヘアスタイル》“切ってもらうと成績が向上する”と評判の美容師が担当 ソウルで水原被告と一緒にカット、料金は大谷が支払う
女性セブン
全国赤十字大会ではスピーチに目を潤ませる場面もあった(4月、東京・千代田区。写真/JMPA)
『虎に翼』を楽しんでいらっしゃる雅子さまと愛子さま 女性天皇への期待高まるなか、揺れるお立場に「日本初の女性弁護士の物語」を重ねられて
女性セブン
女子ゴルフ界の新星として注目を集める清本美波
【プロテストでトップ合格】女子ゴルフ界の新星・清本美波、女子大生と二足のわらじを履く18歳「目標はタイガー・ウッズ」
週刊ポスト
フリーになるも苦戦が続く上重聡アナ
《超大型連休続く?》元日テレ・上重聡アナ、「交渉しまして」古巣復帰の苦境 根強い“利益供与問題”のイメージ、自虐ネタに活路か
NEWSポストセブン
詐取の疑いで逮捕された元宝塚“大滝子”こと光原エミカ(HPより)
《『水ダウ』ざます企画に出演》元宝塚・月組トップスターが現金1000万円詐取の疑いで逮捕「ディナーショーが8万円に値上がり」ファンが察知した違和感
NEWSポストセブン
亡くなったシャニさん
《7か月を経て…》ハマスに半裸で連行された22歳女性が無言の帰宅、公表された最期の姿「遺体の状態は良好」「肌もタトゥーもきれいに見える」
NEWSポストセブン
中尾彬さん(時事通信フォト)
《“ねじねじ”で愛された中尾彬さん(81)が急逝》大病を機に始めていた“終活”、コワモテ俳優からコメンテーターとして人気を博した晩年
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン