団塊エリートの失脚理由は「若き日の挫折」と「気質」
昭和23年生まれの社会学者・橋爪大三郎氏が語る。
「我々団塊世代が大学生だった頃、知性、行動力、統率力などに優れた同世代のエリートは学生運動のリーダーを務めることが多かった。しかし彼らはその後逮捕されたり、運動の敗北で挫折を味わったりして、表舞台から姿を消した。様々な分野で優秀な人材が失われたことは間違いない。中には政治の世界に進んだかもしれない人も含まれていたでしょう」
昭和23年生まれ、元参議院議員で前東京都知事の舛添要一氏によれば、団塊の世代にも総理総裁の可能性があった者はいた。鳩山邦夫、中村喜四郎(ちなみに前出・伊藤氏も同意見)。しかし鳩山はすでに鬼籍に入り、40歳で戦後生まれ初の閣僚となった中村は、汚職事件で失脚し、自民党を離れた。
「人数が多く、競争が激しい世代ゆえに論争好き。なまじ弁が立つのでつい攻撃的になって同世代でもまとまりにくく、失言も多い。これこそが団塊エリートの特質であり、上り詰められなかった要因かもしれません。それと正反対の特質を持つのが菅義偉。余計なことは一切言わず、反感も買いにくいから最後まで生き残った」(舛添氏)
菅首相誕生の理由は、“平凡な団塊”だったから──なのかもしれない。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号