芸能

加藤登紀子 コロナ禍の一人生活で知ったルーティンの大切さ

着ている服は、加藤が自らの手でリメイクした世界に1着だけのオリジナル

 夫婦の結びつきが運命のなせる業なら、夫に先立たれた妻が「その後をひとりで生きる」のもまた運命だ。女性の平均寿命が伸びる昨今、ひとりでの生活を楽しむことは結婚生活を楽しむ以上に重要なことかもしれない。歌手の加藤登紀子(76才)はいま、ひとりでの生活を楽しんでいる──。

 加藤は東京大学在学中に、学生運動指導者だった藤本敏夫さん(享年58)と出会い、1972年に結婚。当時、新郎は学生運動で実刑判決を受けて刑務所に収監中だった。

 それから3人の娘を授かり、藤本さんは理想の農業を行うため1981年に千葉県鴨川市に「鴨川自然王国」を設立し、加藤は歌手活動をしながら千葉と東京を行き来した。

 結婚生活30周年を迎えた2002年、藤本さんは肝臓がんでこの世を去った。

「晩年は入退院を繰り返す彼と一緒に東京で過ごしました。子供は独立していたので夫婦ふたりきり。私は仕事をしながら、自宅にいるときは必ず朝食を彼と一緒に食べていたので、彼が亡くなってからは朝になるとすごく寂しくて、ご飯を食べられませんでした」(加藤・以下同)

 いつも隣にいた大切な人が姿を消し、悲嘆にくれる妻を救ったのは夫の遺品だったという。

「彼の死後、鴨川自然王国にある高床式小屋の風通しのいい床下に、仕込まれたおみそが30樽見つかったんです。夫が病気になる前に仕込んだものらしく、じっくり熟成されていて、とてもおいしかった。私はそのおみそで作ったみそ汁を飲むのが日課になり、朝食がまた楽しみになりました」

 それから18年の間、加藤は夫の遺志を受け継ぎ、歌手として活躍する傍ら定期的に鴨川を訪れ、仲間たちと暮らしてきた。

 しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大予防のステイホームの影響で、4月からの3か月間をひとりきりで過ごすことになった。朝昼晩と、自分ひとりのためだけに食事の準備をするのは初めての体験だったという。

 そこで身に染みたのが、「ルーティン」の大切さだ。決まった習慣を行うことで、自分らしさを保つことができたと話す。

「私くらいの年齢だと、パートナーに先立たれて、ひとり暮らしで仕事をしていない人も多いでしょうが、私もステイホームで同じ状態を経験しました。そのとき、ライフスタイルを維持するために、ルーティンが励みになると気づいたんです。ひとり暮らしは誰にも怒られませんから、だらしなくしようと思えばいくらでもできる。一方で、自分で決めた自分なりのルーティンをこなすことも、ひとり暮らしの醍醐味なんです」

 コロナ禍以前から、加藤にはいくつかのルーティンがあった。1つは、もともと夫の日課だった「新聞の切り抜き」。気になった記事を切り抜くことで世の中の動きをとらえ、「いま」という時間を受け止められるという。

 さらに、「朝ドラ(NHK連続テレビ小説)を毎朝見る」「夕方のチャイムが鳴ったら夕食を作る」「お風呂にゆっくり入る」といったものも。

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