再感染や重症化リスクをどう捉えるのか
一般に、ウイルスに感染した患者は体内で抗体ができる。この抗体が再感染を防ぐことが免疫の基本的な考え方だ。ただ、新型コロナではそう簡単には進まないことがわかってきている。
感染して抗体ができても、数か月経つと減ってしまうというのだ。抗体が減ってしまえば、再感染する可能性が出てくる。実際に、新型コロナの患者か一旦回復した後、再感染した事例が各国で複数報じられている。
これに対して、一部の専門家からは、ウイルスの特徴は免疫細胞に記憶されるため、抗体が減っても再感染時に免疫が働くとの見解が出されている。また、感染を重ねると、免疫が強化されて症状が軽くなるといった見方もある。
このように、再感染や重症化についての免疫の働きについては、専門家の間でまだ結論が出ていない。ただ、新型コロナは「一度かかってしまえば二度とかからない」というほど単純ではないことは確かなようだ。
集団免疫獲得までに生じる「多くの犠牲」
また、集団免疫論には、集団免疫が確立するまでに死者や重症者などの多くの犠牲が生じるために問題があるとする見方も多い。たしかに、何もせずに自然に感染するのを待つというのは、感染症に対してあまりにも無為無策といえるだろう。
先ほどの論文によると、調査対象のマナウス地域では、住民1000人に1人が死亡するとの死亡率がみられている。死亡者数が世界最多となっているアメリカでも0.6人程度、日本では0.01人ほどであることを踏まえると、この死亡率の高さは、とうてい受け入れ難いだろう。
加えて、死亡には至らなくても、重症患者が多発して医療体制が崩壊する恐れもある。そうなれば、新型コロナ以外の病気を抱えた患者にもその影響が及ぶこととなる。
WHOは、集団免疫論について否定的な見解を示している。感染拡大を放置して集団免疫の獲得を目指すのは「科学的にも倫理的にも問題がある」との警告だ。