――とはいえ、周囲は男性ばかりの中で、どんな心情で仕事をされていたのでしょうか。
竹内:高校時代からクラスメートも男性が多かったので、雰囲気的には何も抵抗はありませんでした。評価ドライバーになった頃は20代半ばで若かったこともあり、「この世界でご飯が食べていけるようになりたいし、運転の技術や評価のスキルでは誰にも負けたくない」との思いは強くありました。
――マツダ社内の女性では今も竹内さん以外に出ていない「特Aランクのライセンスホルダー」にまでなったそうですね。
竹内:はい。会社敷地内の駐車場のみクルマを動かせるEランクから始まって、社外走行がOK、さらに100何キロ出して走るとか、200キロ出してもいいとか、順次ランクが上がるわけですが、当時は週末のたびに試験場に行って練習し、毎年試験を受けて1つずつランクを上げていきました。
Aランクの上に特AとS、特Sの3つがあって、この3つがエキスパートコースです。私はAランク取得後、レーシングドライバーに教わりながら1年かけて特Aライセンスを取りました。走りの領域では、試験部門のメンバーとも対等に話ができるレベルの技術を身につけたいという思いが強かったですね。
──仕事の中身や性別に関係なく、負けん気が強かったんですね。
竹内:若い頃はがむしゃらで、とにかく同僚に負けたくないという意識が強かったのですが、性能評価をまとめる立場になった頃からは、まずはメンバーの話をじっくりと聞くことに徹しています。
試験部隊の統括をしていた時期もそうでしたが、「明日までにレポートを出して」とメンバーを急かしたところで、「大変なことばかりで時間が足りない」「試作車がもっとほしい」「部品やお金が足りない」とか、反発されるだけなんです。
こちらの要望を先に言ってしまうと、「無理です」と返されて衝突になってしまいますから、とにかくヒアリングをしてチームメンバーそれぞれの言い分を全部聞いて、待てる間は待って譲歩する。それが仕事を円滑に進めるコツだと思っています。