無名だった久保田早紀を起用した『異邦人』は300万枚を超える大ヒットとなった
故・ジャニー喜多川さんは信念の人だった
ここから酒井さんの快進撃が始まるのだが、そのカギとなるのが作家・寺山修司との運命的な出会いだ。
「私は寺山さんの劇団『天井桟敷』の舞台を観て、アイドル路線とは対極的な世界観に圧倒されました。寺山さんとの親交を深め、やがて劇団員だったカルメン・マキの歌う『時には母のない子のように』を手がけます。これはCBS・ソニー初のミリオンセラーとなり、私は仕事の幅を広げることに成功しました。
ジャニー喜多川さんを紹介してくれたのも寺山さんです。フォーリーブスの音楽プロデュースをすることになり、その後、郷ひろみへとつながります。ジャニーさんは信念の人。当時は若い男の子ばかり集めてどうするのという風潮でしたから。逆風の中、男版宝塚を作るんだと夢を語っていたことが忘れられません。見事に実現しましたからねぇ。あんな偉人は二度と現れないと思いますね」
【プロフィール】
酒井政利(さかい・まさとし)/1935年、和歌山県生まれ。立教大学卒業後、松竹、日本コロムビアを経てCBS・ソニーに入社。プロデューサーとして南沙織、郷ひろみ、山口百恵、松田聖子など多くのスターを生み出す。『愛と死をみつめて』(1964年)、『魅せられて』(1979年)で日本レコード大賞を受賞するほか、受賞作多数。現在は、酒井プロデュースオフィス代表取締役として音楽プロデュース業のかたわら、次世代のプロデューサーの育成に励んでいる。
取材・文/丸山あかね
※女性セブン2020年11月19日号