徹底抗戦を宣言しながらゴルフに出かけたトランプ大統領(EPA=時事)
トランプ支持を表明する反体制派中国人の代表格が、「盲目の弁護士」こと人権活動家の陳光誠氏だ。盲人でありながら法律知識を学び、農民や障害者など弱者を助けるなどの活動を行い、ついに当局から睨まれるようになった。2012年に軟禁されていた自宅から脱出して北京大使館に逃亡し国際問題となるも、最終的に米国への亡命が認められた。陳氏の亡命を手助けしたのはオバマ前大統領下の民主党政権だったが、今では陳氏はばりばりの共和党支持者になっている。
陳氏は、今回の大統領選で明らかなフェイクニュースも含めて、バイデン氏の不正疑惑をTwitterで紹介しまくっている。自らも障害を持つ身でありながら弱者を助けた人徳で知られる同氏が、フェイクニュースを連発する人に変わってしまう。反体制派中国人がどれだけトランプ氏に入れ込んでいるかを示すエピソードだ。
反体制派の在外中国人だけではなく、香港や台湾でもトランプ氏に期待する人は少なくない。同様にフェイクニュースを含めたバイデン・バッシングが見られるが、さらに一歩踏み込んだ問題も発覚している。バイデン氏の息子が中国共産党とビジネス上の関係を持っているといった内容の報告書がネットに流出していたが、この報告書は民主派寄りの香港紙アップルデイリーの関係者が出資して制作させたものであることが明らかとなったのだ。アップルデイリーの創業者である黎智英(ジミー・ライ)氏は組織的な関与を否定しているが、トランプ氏に向けたフェイクニュースの援護射撃を行ったのではとの疑いは拭いされない。
多くのデマが日本にも出回り、日本人まで踊らされている「ポスト・トゥルース」の米大統領選。だが、飛び交う怪しげな情報の中には米国直輸入のものだけではなく、中国発、香港発のものまで含まれているという、なんとも面倒くさすぎる状況になっている。
【高口康太】
ジャーナリスト。翻訳家。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を行う。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)など。