国際情報

米大統領選、「不正選挙」訴える中国発デマが飛び交った背景

バイデン

11月7日、勝利演説をする民主党のバイデン前副大統領(写真/時事通信社)

 民主党のジョー・バイデン前副大統領が当選確実となった米大統領選挙。11月7日に勝利宣言が行われると、菅義偉首相やドイツのメルケル首相など、各国の指導者が祝意を表明し、バイデン氏の勝利を歓迎した。だが、黙っていないのが熱狂的なトランプ支持者の人々。飛び交うさまざまなデマを流す人の中には、米国人だけでなく中国人も含まれているというから驚きだ。中国の経済、社会に詳しいジャーナリストの高口康太さんが解説する。

 * * *
 米大統領選は、デマが飛び交う異例の選挙戦となった。バイデン氏の勝利が確実となり、すでに次期大統領として政権移行に向けた動きも加速させる中、トランプ氏は依然敗北を認めず、不正投票が行われていると主張。米メディアから「不正投票の証拠はない」と批判されてもなんのその、法廷で争う構えを示し続けている。

 そんな中、トランプ支持者は続々と具体的な“不正”を主張している。

「ウィスコンシン州で投票率が100%を超えた」
「選挙管理委員会が投票数を操作している」
「トランプ支持者にはシャーピーブランドのインクペンが渡されたが、このペンを使うと有効投票にカウントされない」

 ……などなど、ひっきりなしに新たな“疑惑”を主張しては、メディアからことごとくフェイクニュースと判定を受けている。

「ポスト・トゥルース」、すなわち真実(客観的な事実)よりも、感情に訴えかける情報が影響力を持ち、人々が“何を信じたいか”が優先される時代。トランプ政権下で流行語となった言葉だが、任期の最後にポスト・トゥルースとは何かを知らしめる特大の混乱が生まれている。

「アメリカは大丈夫なのかしら」と不安になるところだが、残念なことに米大統領選がらみのデマは少なからず日本にも“輸入”されており、上述の“疑惑”は英語ではなく日本語の情報としてSNSで出回っている。このデマが英語から日本語への直輸入ならばまだ分からないではないが、なぜか中国語圏を一度経由してから入ってくるケースもあるから、また複雑だ。

 毎日新聞は11月6日、「『大量のトランプ票を埋めた』動画は誤り 実際はサウジの冷凍チキンか」と題した記事を掲載した。トランプ氏に投じられた票が山に埋められているところを撮影したとする動画が日本で話題となったが、実は鳥肉の廃棄処分の動画で明らかなデマだったとしている。

 この動画を紹介し日本語でツイートしたのは、在日中国人漫画家の孫向文氏。他にもすでに死んでいる人物の投票が確認された、廃棄された票が発見されたなど、米大統領選の不正投票“疑惑”について数多くつぶやいている。だが、その中には中国語でのTwitterの書き込みを情報源としているケースも少なくない。

 中国本土では、ネット検閲によりTwitterの使用が規制されているため、Twitterの中国語ユーザーのかなり多くを海外在住の中国人が占めており、その中には反体制派も多い。敵の敵は味方ではないが、中国共産党に反感を持つ中国人にとっては、対中強硬姿勢を取るトランプ氏はヒーローに見えるのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
若隆景
序盤2敗の若隆景「大関獲り」のハードルはどこまで下がる? 協会に影響力残す琴風氏が「私は31勝で上がった」とコメントする理由 ロンドン公演を控え“唯一の希望”に
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン