報道を見ると、トランプ氏が頻繁に話しているのは、まず二人の息子たち。ドナルド・ジュニア氏とエリック氏はとても似ており、せっかちで軽薄な行動が目立つ。ジュニア氏はコロナ死者が40万人に達するという推計に対して、「それがどうしたというのだ。そんなもの何でもない」と放言して猛批判を浴びた。おそらくブレーン役を務めているのは娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問だろうが、頭はキレるが猜疑心が強く、トランプ氏の不満を抑える役目は無理だろう。あとはメラニア夫人と長女のイヴァンカ氏だが、彼女たちは徹底抗戦の構えの大統領とは少し違う意見だとも報じられており、あまり口出しできずにいるのかもしれない。
デモと同じ日にCNNに出演したレーガン大統領のスピーチライターだったペギー・ヌーナン氏は、多くの人たちの努力で築いたアメリカの民主主義を、大統領自らが踏みにじって傷つけていることに、涙ながらに怒りと悲しみを表明した。筆者はその姿に感銘を受けると同時に、ユーモアと寛容と優しさに満ちたレーガン氏の演説を思い出した。
共和党の質の低下は見るに堪えない。トランプ氏を止めなければならない立場のギングリッチ元下院議長やジュリアーニ元ニューヨーク市長らがFOXニュースに出演して、トランプ氏の嘘を増幅し、悲劇の英雄扱いしているのだから末期症状である。これには、来年1月に行われるジョージア州の2つの上院決選投票が関係している。もし2議席とも民主党が勝てば、民主党はホワイトハウス、下院に加えて上院でも多数を獲得し、安定した政権運営ができる。共和党にとっては長い冷や飯が決まる。だから、ジョージアでトランプ氏を支持した有権者をつなぎとめるために、トランプ氏の徹底抗戦を援護しているのである。
トランプ帝国の暴走は、それに頼り切ってきた共和党の荒廃を招いたと言える。