驚くべきことに、相談員はすべてボランティアで成り立っている。1~2年ほどの研修を受けた後、本業の合間を縫って対応する人が多い。深夜から早朝にかけて電話相談を受け、そのまま仕事に向かう相談員も多いというが、そんな状況にはお構いなしに、受話器の向こうから容赦のない罵声を浴びせられることも少なからずある。
「お酒を飲んだ相談者から『なんだ、いまの返事は!』『お前はバカか!』と怒鳴られ、夜中の3時半から1時間以上罵倒された相談員がいます。相談員が男性だと電話を切り、女性が出ると『下着は何色ですか?』と聞くいたずら電話もあります」(「宮崎いのちの電話」事務局長の高宮眞樹さん)
渋井さんは「相談員になるハードルも高い」と指摘する。
「そもそも相談員は、研修や交通費はすべて自己負担。そうなると、若い人にはハードルが高く、ある程度、金銭的に余裕のあるリタイア世代が中心になる。このままでは、相談員はどんどん高齢化し、人数も減少していきます」
慢性的な苦境にコロナが追い打ちをかける。「東京いのちの電話」では一時、半数の相談員が活動を休止した。
「往復の交通機関での感染リスクを避けるためにやむを得ずというのが、活動休止の主な理由です。なかには、家族から止められた人も多かったようです。人員が減少するとこれまで続けてきた24時間365日体制は維持できない。9月以降は、水木金土曜の週4日のみ24時間体制を敷いています」(郡山さん)
さらに深刻なのは、電話がつながりにくい状況下で、自殺を望むほど追い詰められた相談者が増えていることだ。「北海道いのちの電話の統計でも、『終わりにしたい』『この先、生きていてもなんの希望もない』といった自殺をほのめかす相談が、目に見えて増えています。コロナによる孤立感、疎外感が深刻化していることがわかります」(「北海道いのちの電話」事務局長の杉本明さん)
【相談窓口】
「日本いのちの電話」
ナビダイヤル0570-783-556(午前10時~午後10時)
フリーダイヤル0120-783-556(毎日午後4時~午後9時、毎月10日午前8時~翌日午前8時)
※女性セブン2020年12月3日号