ライフ

選択的夫婦別姓 いまだに強く反対する人がいるのはなぜか

選択的夫婦別姓

選択的夫婦別姓に賛成は7割超

 時代とともに変化するのは夫婦のあり方とて同じだ。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。

 * * *
 先日、ひとつの調査報告が発表された。早稲田大の棚村政行教授の研究室と市民グループ「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による、選択的夫婦別姓についての合同調査だ。同調査は、全国の20歳から59歳までの男女7000人に、結婚の際の姓のあり方について4者択一の形式で質問。結果、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」が14.4%、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が35.9%、「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」が34.7%、「その他、わからない」が15.0%となった。

 選択的夫婦別姓を肯定したといえる「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」と「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」を合わせると70.6%。各マスメディアはこの調査結果を「選択的夫婦別姓賛成が7割超」といった見出しで報じ、その割合の高さに注目した。

 選択的夫婦別姓制度の法制化をめぐる議論は1970年代から行われている。そして、そのたびに賛成反対の両論で割れている、さらなる国民的議論が必要である、とされてきた。だが、今回の調査では7割超が賛成だったのみならず、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」という反対が14.4%しかなかった。これはもう両論で割れているというには無理のある数字だ。選択的夫婦別姓に反対している日本人は、すでに少数派なのである。

 このニュースに、日本人は夫婦同姓であるべし、と考える保守派はどう反応したか。検索して真っ先に見つかったのは、元航空幕僚長で政治活動家である田母神俊雄氏の以下のツイートだった。

〈今朝のNHKのニュース、世論調査で夫婦別姓に賛成が7割だとか。信じられないがこれも日本ぶち壊しの一つか。田中さんの奥さんが鈴木さんで鈴木さんの奥さんが田中さんだとか言ったら混乱を招くだけだ。女性は愛する男性の姓を名乗ることに喜びを感じる人が多いのではないかと私は思う〉

 つっこみどころ満載である。まず、「日本ぶち壊し」と大仰な表現に苦笑する。夫婦同姓から夫婦別姓にまるごと変えるという話ならばそういう強い言い方もわかるが、議論されているのは飽くまで「選択的」夫婦別姓だ。別姓にしたい夫婦はそうしてもいいよ、というだけのこと。その程度の選択の余地を与えただけでぶち壊れるほど、日本はもろい国なのか。

 田中さんと鈴木さんで混乱する云々は、ちょっとお茶目な言葉遊びをしてみたということだろうか。でも、たとえば同窓会メンバーを思い浮かべて、田中太郎君の奥さんになったのが同じクラスの鈴木京子さんで、鈴木大輔君の奥さんになったのが隣のクラスの田中美奈さんだ、というふうにすれば、べつに混乱なんかしない。それよりも現実は、結婚して姓が変わることで、同窓の女性の顔と名前が混乱することのほうがずっと多い。

男性の姓を名乗ることは喜びか

 でもって極めつけは、〈女性は愛する男性の姓を名乗ることに喜びを感じる人が多いのではないかと私は思う〉という締めの一文。田母神氏は1948年生まれの72歳だが、時代はいつ頃で止まっているのだろう。氏が20歳だった60年代までは、もしかしたらそういう乙女心の女性がそれなりにいたのかもしれない(私は、当時だって、その「喜び」は男性側が勝手に抱いていた幻想であった場合が多かったのではと思っている)。

 しかし、時は40年以上流れたのだ。当時だってかなり進んでいた核家族化はさらに進行し、家制度的な「お嫁に行く」という感覚も相当薄くなった。それはことさら女性に顕著で、今回の調査で「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」と回答したのは、20~29歳の女性で6.3%、30~39歳で6.6%、40~49歳で8.2%、50~59歳でも8.8%しかいない。〈男性の姓を名乗ることに喜びを感じる〉女性はとても少ないことを物語っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン